今回の「金融政策決定会合」で「マイナス金利解除へ」は早すぎる 須田慎一郎が指摘
マイナス金利を解除しても、いきなり金利が復活するのではなく、マイナスがゼロに戻るぐらいの意味合い
飯田)GDPの数字が改定されて、一応はプラスになりましたが、個人消費はマイナスがさらにマイナスになりましたよね。 須田)GDPの5割強を占め、景気の牽引役と言われている個人消費が弱含みなので、やはり、もう少し様子見をするのかなと思います。一方、個人消費が回復軌道に乗ってプラスになったとき、いきなりマイナス金利を解除すると反動が大きくなるでしょうから、将来的にどうなるかを見込んで少しずつ解除するのだと思います。いきなり「ドン」と解除するのではなく、サラミを切るような形で解除に向かっていく。そういう判断なのかも知れません。 飯田)確かに、先週辺りは「イケイケドンドン」というような報道でしたが、昨日(17日)、一昨日くらいの日経電子版などでは「マイナス金利はやめても金融緩和は続ける」という報道に変わっています。 須田)そこは間違いないのですよ。マイナス金利をやめても、いきなり金利が復活するわけではなく、マイナスがゼロに戻るぐらいの意味合いでしょう。ゼロ金利も十分な金融緩和策ですから、ベースは変わらないのです。いわゆるYCCを含んだマイナス金利政策、かなり振り込んだ金融緩和策は少し緩和していくのだと思います。
よい物価上昇を続けていきたい政府とブレーキを踏みたい日銀とのせめぎ合いが起こる
飯田)金利を上げるとなると2007年以来だそうですが、議事録を読むと前のめりの日銀サイドに対し、政府から出ている人たちが「もう少し待ってくれ、まだそこまで温まっていない」と必死に止めていたように読めます。その辺りの体質は違うものなのですか? 須田)もちろん違うし、それが重要なポイントですよね。政府・日銀一体ということで、いま政府はよい物価上昇、つまり賃上げを伴う物価上昇を実現しようと動いているわけです。それが結実したのが今回の春闘です。ただ、そうは言っても大手企業は上げられるけれど、全部の中小企業が対応できるわけではありません。なおかつ賃上げの持続が見通せているわけでもない。となると、いまはマイナス金利政策、あるいは金融緩和策を解除するようなタイミングではないので、政府としてはよい物価上昇を続けていきたいのです。 飯田)マイナス金利政策を解除するタイミングではない。 須田)ところが日銀としては、よい物価上昇が見えてきた段階で、やはりブレーキを踏みたい。「ブレーキを踏むのが日銀の役割だ」というせめぎ合いが今後起こると思います。