「Bクラスも覚悟していた」仙台大が2年連続の全国切符獲得 序盤苦しんだ4年生が見せた意地
「『全員で勝ちきる』という言葉が一番合うチームになったかなと思います」。3年生以下では、2本塁打12打点と快音を響かせた平川蓮内野手(3年=札幌国際情報)、扇の要を担った井尻琉斗捕手(2年=北海)、遊撃の定位置をつかんだ新保玖和内野手(1年=霞ヶ浦)ら各学年のキーマンがシーズンを通して活躍。自身がケガの影響で守れない三塁の穴は藤江優斗内野手(2年=米子松蔭)や阿部蒼太郎内野手(4年=柴田)が埋めてくれた。頼もしい仲間がいるからこそ、精神的支柱であり続け、バットで貢献することができた。
ピンチを救った4年生救援陣の奮闘
投げては渡邉一生投手(3年=日本航空/BBCスカイホークス)と大城海翔投手(1年=滋賀学園)が全節で先発。渡邉は4勝、防御率0.27で最優秀選手賞、最優秀投手賞、ベストナインに輝き、大城もルーキーながら3勝、防御率1.38と堂々たる成績を残した。若き両左腕が優勝の立役者になったことは間違いないが、投手陣も4年生の支えが不可欠だった。
「一生や大城が頑張って長いイニングを投げているので、厳しい場面になったら自分が助けよう」と腕を振ったのがサイドスロー右腕の小野寺唯人投手(4年=東北)だ。今春は5試合に救援登板。東北工業大1回戦では3回3分の1を完璧に抑える好救援を披露し、東北福祉大戦の2試合はいずれも満塁の場面でマウンドに上がり相手に傾きかけた流れを断ち切った。
東北福祉大2回戦、1点でも失えばサヨナラ負けが決まる九回二死満塁のピンチで登板し打者一人を抑えた篠塚太稀投手(4年=千葉黎明)も最上級生。小野寺、向坂優太郎投手(4年=仙台育英)から受け継いだマウンドとあって「開幕したばかりの頃は4年生のベンチ入りが少なかった。4年生でつないで勝てたのが嬉しい」と感慨深げだった。「後輩が頑張っているので、先輩が打たれたら顔向けできない」。大一番でプレッシャーを力に変えた。
「勝って反省」繰り返し頂点目指す
開幕戦では上級生に苦言を呈した森本監督だが、リーグ終盤は「4年生が頼りになる。経験のある人間がしっかり試合をコントロールできている」と全幅の信頼を寄せていた。 ただ、チーム全体に対しては最終戦の後の取材で「よくここまで成長した」とたたえつつ、「まだまだ弱いし、力はない。勝って反省の繰り返しで、少しずつ強くなっている部分もあるし、足りない部分もある」と手放しに褒めることはしなかった。2年連続4回目の出場となる全日本大学野球選手権の初戦は6月10日。余韻に浸る時間はない。 上級生の不調を補える下級生と、ここぞというときに頼りになる上級生がいる強みを生かし、全国の舞台でも「全員で勝ちきる」野球をやってのける。
(取材・文・写真 川浪康太郎)