金属反応の機雷除去のため木造 火災はしばしば、消火訓練は必須 海自掃海艇
10日午前9時40分ごろ、福岡県宗像市の大島の沖合で、航行中に起きた火災で炎上、沈没した海上自衛隊の掃海艇「うくしま」(基準排水量510トン、38人乗り組み)は、金属に反応して爆発する機雷の除去を行うため木造船だった。海自は繊維強化プラスチック(FRP)製の導入を進めるが、掃海任務にあたる小型の掃海艇と大型の掃海艦全体の3分の1にとどまる。 【写真】炎を上げる海上自衛隊の掃海艇「うくしま」 掃海艦艇は、海底や海中に敷設された機雷の爆破処理が主な任務。海上を通過する艦艇のスクリュー音や磁場に反応して爆発する沈底機雷に対して、海中に疑似音を流しながら約500メートルの金属ケーブルを曳いて誘爆させる「感応掃海」という手法を取る。 そのため、掃海任務に当たる艦艇18隻はいずれも非金属製だ。全て木製だったが、平成24年から軽くて丈夫なFRP製に順次置き換え、現在6隻が就役している。 海自艦艇は内部が高温になる発電機やディーゼルエンジンなどを使用しており、火災の危険と隣り合わせの環境にある。 平成以降、掃海艦艇だけで小規模火災が3件ある。令和元年10月に「すがしま」で発電機室から出火。平成31年1月には「ししじま」でエンジンの排気管が外れ、400度の排気が漏れて木製の柱から出火した。14年8月にも「まきしま」で機関室から火が出ている。 沈没に至ったのは過去1件。昭和41年10月、特務艇「高速13号」から出火、炎上し、沈没した。 今回の火災では機関室にいた当直機関士2人のうち1人が負傷し、1人が行方不明に。逃げ場がない洋上での火災は致命的だ。海自では全艦艇で頻繁に消火訓練を行っており、「多い時には月1回はやっている」(海自関係者)という。(市岡豊大)