【後編】麻酔科医が足りない…無痛分娩の賛成8割超えなのに実施率1割以下のワケ【独自アンケート】
麻酔により出産の痛みを緩和する無痛分娩。欧米では一般的になっている国もある中、日本での実施率は8.6%にとどまる(2020年)。その理由を探るべく、独自アンケートを実施すると、女性が無痛分娩を選ぶことへの賛成は8割を超えた。では、なぜ広がっていないのか。その背景には、費用負担の問題に加え、無痛分娩を実施できる麻酔科医が足りない現状があった。(日本テレビ報道局 細川恵里)
■無痛分娩ができる医療機関のかたより
神奈川県立保健福祉大学の田辺けい子准教授は、費用負担が重いことのほかに、もうひとつの問題点を指摘する。「無痛分娩を取り扱う医療施設の数が都市部と地方とで圧倒的な格差が生じている」ということだ。麻酔の専門的な知識が必要な無痛分娩。専門知識と技術を持った麻酔担当医がいない医療施設では実施すること自体が難しいという。調査でも、町や村では、無痛分娩経験者の割合が顕著に少ない結果となった。
■無痛分娩ができる麻酔科医を増やすために
無痛分娩を受けたくても受けられない状況をどうすべきか。日本産科麻酔学会の照井克生理事長は、「無痛分娩ができる麻酔科医を増やすことが必要」と指摘する。そのために、日本産科麻酔学会などが教育の機会を増やしているほか、無痛分娩など産科麻酔の専門知識を学んだことを認定する「認定制度」も検討しているという。「認定制度ができれば、産科麻酔や無痛分娩に興味を待つ麻酔科医が増えるのではないか」。
さらに、将来的には、地域の産科クリニックなどで日々の健診などを受けつつ、出産する場所を総合病院などに集める『出産施設の集約化』が必要ではないかという。「そうすれば、地域の産科クリニックで診察を受けられるというメリットも維持しつつ、出産の際の麻酔医科医による無痛分娩の処置や、急変にも対応できる」。
■無痛分娩ができる産婦人科医を育てるために
一方で、麻酔科医を増やすだけでなく、無痛分娩ができる産婦人科医を育てることが必要だという人も。産婦人科の専門医で麻酔科の指導医でもある入駒慎吾医師は、麻酔科医のいない医療機関の産婦人科医に、安全に無痛分娩を実施するための専門知識を教えるなどのサポート活動を行っている。都立病院なども含め、30を超える施設を継続的にサポートを受けているという。