親子ら3人死傷の猪苗代湖ボート事故…仙台高裁「過失は認められない」無罪判決
FCT福島中央テレビ
4年前、猪苗代湖で起きた親子ら3人が死傷したボート事故の控訴審で判決公判が開かれました。仙台高裁は、一審の実刑判決を破棄し、被告に無罪を言い渡しました。 業務上過失致死傷の罪に問われているのはいわき市の元会社役員=佐藤剛被告(47)です。佐藤被告は、4年前猪苗代湖の湖面に浮いていた親子ら3人を操縦するボートで巻き込み死傷させたとされています。この事故で、当時8歳の豊田瑛大くんが亡くなり、瑛大くんの母親も両足の膝から下を切断する大けがをしました。裁判での大きな争点が「事故を回避できたか」という点です。一審の福島地裁は「適切な安全確認をしていれば、被害者らを発見し衝突を回避できた」として禁錮2年の実刑判決を言い渡しましたが、判決を不服として弁護側は、即日控訴。控訴審では、「被告は前方左右を見渡して安全確認をした後、船を前進させた」として弁護側は、改めて無罪を主張し、検察側は控訴の棄却を求めています。 ■川上耕平記者 「仙台高裁前です。猪苗代湖での事故発生から4年あまりが経つ中、まもなく控訴審の判決が言い渡されます」 迎えた判決公判。主文を前におよそ80分、判決の理由と要旨を説明した後、仙台高裁が言い渡したのは… ■井上朔実記者 「無罪判決です。仙台高裁は一審の判決を破棄し、佐藤被告に無罪判決を言い渡しました」 仙台高裁の渡邉英敬裁判長は「安全を確認しても回避できたとは言えず、過失は認められない」として、一審判決を破棄し、佐藤被告に無罪判決を言い渡しました。佐藤被告は弁護人を通じてコメントを発表しました。 ■佐藤被告の弁護人・吉野弦太弁護士 「当時十分な針路の安全確認を行っていました。この度の控訴審判決は、その点を確かな証拠に基づいてお認めくださったものと理解しています。」 そして、無罪判決について、弁護人は。 ■佐藤被告の弁護人・吉野弦太弁護士 「前提条件を出来る限り事故当時に合わせるってことが大事で、私たちは本当に基本に忠実にやっただけ」 今回、判決でも触れられた県警の実況見分を批判しました。 一方、仙台高等検察庁は今回の無罪判決を受けて、「判決内容を検討のうえ適切に対応したい」とコメントしています。ここからは、控訴審を取材した川上記者とお伝えします。川上さん。控訴審では、一審の実刑判決を破棄し無罪となりましたが、なぜ、今回、一審と控訴審と異なる判断になったのでしょうか。 今回の裁判では主に「事故を回避できたか」が争点となっていました。一審判決では「適切な安全確認をしていれば、被害者らを発見し衝突を回避できた」として禁錮2年の実刑判決を言い渡しました。一方、弁護側は「被告は前方左右を見渡して安全確認をした後、船を前進させた」として改めて「無罪」を主張していました。こうした中、控訴審判決は、一審判決で採用された福島県警の実況見分について、事故当時の状況と異なるなど、被告人に不利なものと判断し「被害者らを確実に発見できたとは認められない」としました。そして、一審判決について「被告人の過失について、事実を誤認するに至ったもの」としたうえで、「安全を確認しても回避できたとはいえず、過失は認められない」と一審判決を破棄し、無罪判決を言い渡しました。今回、逆転無罪ということもあり判決が言い渡されると判決の際、被告は下を見ながらも落ち着いている様子、一方、遺族は呆然している姿が印象的でした。この4年前の事故を巡っては、幼い子どもの命が失われた痛ましい事故を二度と起こさないため猪苗代湖では、ことし7月からボートの航行区域が規制されるなど対策が強化されています。今回の事故の教訓として、猪苗代湖のみに限らず、あらゆる場で水上レジャーの安全と対策を改めて1人1人が考える必要があると感じます。