フェラーリ・アプルーブド(認定中古車)の仕組みがすごい!即納と価値向上を可能とした「お墨付き」制度
これはすごい体験だった。私は以前にもフィオラノを走ったことがあったが、そのときはフェラーリのテストドライバーの指南をあおぎながらで、このコースを疾走するのは久しぶりだ。 SF90ストラダーレは、前輪をモーターで駆動。スタートして、最初のコーナーまでに時速150kmを超える瞬発力を見せる。そこで強くブレーキを踏み、きついコーナーの途中まで前輪にしっかり荷重をかけながら回り、そこからアクセルペダルを踏み込んで強く加速していく。
加速と減速がいかにスポーツドライビングに重要か。そして、フェラーリのクルマが、いかに卓越しているか。そのことはSF90ストラダーレよりパワーでは劣るが軽量の296GTBのドライビングでもよくわかった。 SF90ストラダーレを新車で注文すると、ベース価格がおよそ9800万円。しかし、それはあくまでも“ベース価格”でしかない。そこからさまざまな装備(数十~数百万円のものも)を盛り込むことになるから、超がつくほどの高額となる。
しかし、フェラーリ・ジャパンのWEBサイトでフェラーリ・アプルーブドのSF90ストラダーレを検索すると、2022年登録で走行距離が750kmと、まだ慣らし運転も終わっていないような車両が6380万円で掲載されていた。 一般的には高価だ。しかし、ここで書いてきたような理由を鑑みれば「安い」と考える人もいるだろう。当然、すでに車両があるから納車も早い。 「フェラーリ・アプルーブドでの車両購入は、単に保証のついたフェラーリを手に入れることではありません。フェラーリ・ファミリーの一員になれるわけです。イベントでそういう人に会うと、本当にハッピーに過ごしています。そうした様子を見ていると、フェラーリ・アプルーブドの価値はあると、私たちも思いますね」(ショレッティ氏)
■“フェラーリ・ファミリー”を育むために 競合ブランドの中には、ITや株の売買などで大きな利益をあげた人も重要なターゲットとして、新車ほぼ即納の体制をとっているところもある。しかし、そういった買い方をした人が、長きにわたって高価なスーパースポーツを維持する例は多くないという。 それが事実だとすると、20年先までを見据えたこのフェラーリのビジネスは、独自性もあり、長期にわたってユーザーとの関係を育むことで、さまざまなかたちで利益を生んでくれそうで、たいへんユニークなあり方だと思う。“フェラーリ・ファミリーの一員”になりたい人にとって、魅力的なプログラムではないだろうか。
【写真】イタリア・フィオラノ・テストトラックを走るアプルーブド・フェラーリ
小川 フミオ :モータージャーナリスト