おトクなため方、使い方は? 「新生Vポイント」完全攻略マニュアル
この斬新な仕組みは多くの企業を魅了した。その理由を、決済サービスに詳しいITジャーナリストの鈴木淳也氏はこう語る。 「ポイントを目当てにした消費者の集客効果はもちろんのこと、顧客データを活用するマーケティングにも期待が集まったからです」 07年11月にはファミリーマートがT陣営に参画。そのほかにもカメラのキタムラ、ウエルシア薬局、マルエツなど、さまざまな業種の企業がこの巨大な共通ポイント経済圏の一員となっていった。 「10年に三菱商事によってPontaポイントが始まりましたが、それでもTポイントの優位性は盤石でした。そんなT陣営が、さらに勢力を拡大するために打った一手がヤフーとの提携です」(鈴木氏) 12年6月、ヤフー独自のポイントをTポイントに統合することが発表されたのだ。 「リアルでもネットでも使える最強の共通ポイントが誕生するという、エポックメーキングな出来事でした。 しかし、今になって振り返ってみると、この提携がTポイントの分水嶺だったといえます。圧倒的なシェアを誇る共通ポイントの誕生に危機感を抱いた企業たちが、これ以降次々と共通ポイント事業に参入したからです」(菊地氏) 14年には楽天が、楽天スーパーポイント(現楽天ポイント)を実店舗でも使えるように変更。さらに翌年にはドコモも、自社サービス向けに提供していたドコモポイント(現dポイント)を共通ポイントに切り替えた。 「潤沢な資金力を背景に加盟店を増やしていった彼らの後塵を拝し、Tポイントは徐々に勢いを失っていったのです」(菊地氏) Tポイント衰退のもうひとつの理由を鈴木氏はこう語る。 「せっかく得たデータを分析し、まともにマーケティングに活用できる企業がほとんどなかったのも大きいと思います。実際、Tポイントのデータが経営や商品開発に活用されて成功した事例は、私も聞いたことがありません」 従って、加盟店にとって共通ポイントの魅力は実質的には集客力だけということになる。 「ただ、集客のためだけに加盟するのであれば、店舗としては複数の共通ポイントを導入したほうがメリットが大きいですよね。Tポイント全盛期の頃はひとつの店舗がひとつの共通ポイントだけに加盟する独占契約が当たり前だったのですが、それも崩れて"相乗り"が増えていきました」(菊地氏) Tポイントにとどめを刺したのが、ヤフーの離脱である。22年3月をもって、ヤフーが運営するサービスとTポイントの連携が終了したのだ。同社は同年4月から、親会社であるソフトバンクが手がけるPayPay経済圏に取り込まれている。