【若松の公募不調】柔軟な対応が必要(8月5日)
福島県会津若松市の県立会津総合病院跡地利活用事業をめぐり、施設の建設と維持管理、運営などを担う事業者が決まらない事態が続いている。事業者公募の不調が原因で、供用開始時期の遅れは必至だ。早期実現には、現状に照らし合わせて公募条件を見直すなど柔軟な対応が求められる。 市の基本計画では、約2万5700平方メートルの県立病院跡地に、子どもの屋内遊び場を核とした公共施設の整備と、民間事業者による収益施設の設置を掲げている。子育て環境の充実と地域のにぎわいづくりが目的だ。公共施設の整備は、15年にわたる維持管理と運営を含めて一括して事業者に委ねる「DBO方式」と呼ばれる手法を採用し、収益施設については事業者による施設の開発と所有を前提に定期借地権方式とした。 市は今年2月に事業者の公募を始めた。5月中旬までに入札参加表明はあったものの、資格通過者はいなかった。6月に再公募したが、先月19日までに参加表明はなく、公募を中止した。当初2027(令和9)年5月の予定だった供用開始は、現時点でめどが立っていない。参加表明に当たっては、建設と維持管理、運営の専門的なノウハウを持った事業者と、収益事業を担う事業者が連携し、事業スキームを構築する必要がある。一つでも欠ければ、成り立たず、枠組みづくりの段階で断念せざるを得ないケースがあるとみられる。
収益事業を展開する上での課題もある。事業者は市から1平方メートル当たり最低月134円で土地を借りて事業を営むことになる。仮に1万平方メートルとして、月134万円に上る。施設を建てると、さらにコストがかさみ、相当の集客力がなければ、採算が取れないとみる地元関係者は少なくない。市は、相続税や贈与税の算定基準となる路線価などを参考に借地料を算出したとしているが、将来の人口減少や商圏規模なども見据え、改めて精査する必要がある。 2023年の市の出生数は603人と過去最少で、人口がピークだった1995(平成7)年の1428人と比べ半分以下だ。子育て環境の整備は喫緊の課題で、若者の定着に向けた魅力あるまちづくりも欠かせない。地元経済界と連携し、打開策を探ってほしい。(紺野正人)