ドッグトレーナーの鹿野正顕氏が解説 愛犬の「適切なふるまい」に必要な“しつけの法則” “お座り”より先に教えたほうがいいこととは?
犬の「しつけ」と聞いてどのようなことを思い浮かべるだろうか。 “お座り”や“伏せ”の指示に従わせることが「しつけ」だと考える人も多いかもしれない。しかし、こういった考え方はもう時代遅れだ。 【写真】ドッグトレーナーの鹿野正顕氏 人と犬の関係学の専門家であり、飼い主教育を目的としたしつけ方教室「スタディ・ドッグ・スクール」を企画・運営する、ドッグトレーナーの鹿野正顕氏に、最新の犬の飼い方について聞いた。 ■「しつけ」とは「社会化」のこと
子犬は生後3~12週齢に「社会化期」を迎えます。この時期に触れ合った人や犬、また行った場所に対し、適切な振る舞いを身につける「社会化」が起こるからです。 私は、この社会化こそが真の「しつけ」だと考えています。 社会化が起こっていないと、例えば「子どものいない家庭で育つと、子どもの声に反応して吠える」ようなことになってしまいやすい。高齢者や男性が苦手というケースもありますね。 これを防ぐためには、社会化期を迎えているうちに、飼い主の家族にいない性別、年齢の人とたくさん触れ合う機会を作ることが大切です。
子犬のうちに社会化ができず成犬になった場合、新規の刺激に対して不安や恐怖を持つようになります。こうなると、一度身についてしまった苦手意識を克服したうえで、新しい刺激に慣れさせることになるので、社会化の難易度はグンと跳ね上がります。 もちろん、そのようなときも飼い主さんは愛犬に理想や期待を押し付けてはいけません。さまざまな経験が必要な時期に経験させなかったという、自身の育て方の問題を理解したうえで、対応していくことが必要です。
最近では保護犬を引き取った飼い主が、しつけに悩むケースが少なくありません。この場合も、過度な理想や期待を押し付けないことが大切です。野犬や野良犬から保護犬になった場合は特にそうですね。 彼らは野生で生活をしていたため、どうしても人に懐くことに対してハードルが高くなってしまう。その結果、しつけがうまくいかないからと、人間の都合で、譲渡された保護犬を再度手放すようなケースもあります。 このようなことのないよう、どのような背景、特性があるのかを知り、受け入れられるかを判断したうえで引き取るべきでしょう。