いよいよ開業1年前!「北陸新幹線」新型車両・E7系の車内を大解剖
北陸新幹線って、どこを走るの?
ところで、北陸新幹線とはいったいどういうものなのか、あらためて「基本」をおさらいしてみましょう。北陸新幹線は、東京から長野・上越・富山・金沢・敦賀を経て大阪へ至る計画の路線です。1972(昭和47)年に「全国新幹線鉄道整備法」で計画が決定され、既に東京~長野間は営業運転が行われています。余談ですが、長野までの先行開業にあたっては、正式路線名の「北陸新幹線」ではわかりづらく、一方で本路線の目的地はあくまでも北陸だという意味を込めて「長野行新幹線」という呼び方をしていました。計画決定から43年、1997年の長野先行開業から18年を経て、ようやく本来の「北陸新幹線」となるわけです。 長野を出た新幹線は、飯山から北へ上がって妙高高原を突き抜け、西寄りに進路を変えて糸魚川へ。そこからは北陸本線と並行に、富山~金沢へと向かいます。途中には飯山・上越妙高・糸魚川・黒部宇奈月温泉・富山・新高岡の6駅が設置され、黒部宇奈月温泉駅は富山地方鉄道と、そのほかの駅は「現在の」JRの既設駅と乗り換えが可能になります。「現在の」というのは、北陸新幹線と並行して走る北陸本線の金沢~直江津間・信越本線の直江津~長野間は、北陸新幹線の開業に合わせて、JRから第三セクター鉄道「IRいしかわ鉄道」「あいの風とやま鉄道」「えちごトキめき鉄道」「しなの鉄道」の4社へ経営が移管されるからです。一年後の再出発に向け着々と準備が進む並行在来線にも、注目したいところです。 なお、金沢から先でもすでに一部の工事が完成しています。金沢駅から約10kmの位置に車両基地が設置されるため、そこまでの回送用線路はのちに本線して使用されることになっているほか、福井駅周辺の高架化工事に合わせて同駅付近はすでに路盤の整備が完了しています。この新幹線用の高架橋は、隣を走るえちぜん鉄道が高架化工事に合わせて一時的に使用することが決まっており、「新幹線の線路をえちぜん鉄道が走る」という姿が数年後に見られるようになります。北陸新幹線は途中の上越妙高駅までがJR東日本、そこから先はJR西日本の管轄となります。本来は境界となる上越妙高駅で乗務員交代が行われるところですが、同駅を通過する列車もあることから、全ての列車が停車する長野駅で乗務員が交代する予定です。 北陸新幹線を走る列車は4種類に分けられ、それぞれの愛称が2013年10月に発表されました。東京~金沢を直通する列車は、停車駅の少ない速達タイプが「かがやき」、多くの駅に停車するタイプが「はくたか」となりました。このほかに、金沢~富山を往復するシャトル便を「つるぎ」、東京~長野を結ぶ区間列車は現行通り「あさま」とすることが決まっています。「かがやき」「はくたか」の停車駅や時刻は現在も検討が重ねられていて、一体どの駅にどの列車が停まるのか、特に地元の方はドキドキしていることでしょう。 来年春の金沢延伸開業に向け、現在量産されているE7系ですが、今月から早くも長野新幹線区間で「あさま」として営業運転を開始。普通車・グリーン車はもちろん、グランクラスにも乗車できる(ただしアテンダントによるサービスはなく、シートに「座るだけ」ですが)ということで、一足早く北陸新幹線気分を味わえるチャンスです。 JR東日本とJR西日本、2社が技術の粋を集めて完成させたE7系・W7系。皆さんもぜひ乗車して、来春の金沢開業への雰囲気を味わってみてはいかがでしょうか。 (文/伊原薫/鉄道ライター) ■伊原薫(いはら・かおる) 大阪府生まれ。京都大学大学院・都市交通政策技術者。(一社)交通環境整備ネットワーク会員。グッズ制作やイベント企画から物書き・監修などに取り組む。都市交通政策や鉄道と地域の活性化にも携わっている。好きなものは103系、キハ30、和田岬線、北千住駅の発車メロディ。