唯一無二のゲーム性が光る意欲作 タワーディフェンスとアクションが混ざる“こってり和風”な神楽戦略活劇『祇:Path of the Goddess』レビュー
カプコンが送る新規IP『祇:Path of the Goddess』をクリアした。タワーディフェンスとスラッシュアクションをミックスした意欲作である今作は、メジャー/インディー問わず他に類を見ないプレイフィールになっており、美しいアートや豊富なロアも相まって、忘れられない体験であったのは間違いない。 【画像】“こってり和風”な神楽戦略活劇『祇:Path of the Goddess』のスクリーンショット 反面、繰り返しが多いゲームプレイであるにも関わらず、いくつかの仕様が面倒に感じられることもあり、課題がゼロだとは言えない作りだった。今回はそんなカプコン期待の新作をレビューさせていただく。 ■「アクロバティックな防衛線」という奇妙なバトルシステム 本作は、穢れにより滅びつつある「禍福山」という土地を舞台に、禍々しき門から現れる「畏哭」という妖怪から巫女「世代」を守るため、村人を使役して戦わせるタワーディフェンスゲームだ。 といっても、コテコテのタワーディフェンスではなく、カプコンらしいアクション的側面が強く押し出されているタイトルでもある。プレイヤーは巫女の守り人である「宗」を操り、昼のあいだは村人たちへ命令を出し、夜のあいだは自身も縦横無尽に走り回って畏哭を薙ぎ倒していく。 命令が大雑把でも自らのアクションでカバーすることができるし、逆にアクションが苦手な人は、村人の配置を徹底して彼らに戦わせればいい。このあたりの機微は上手くできていて、村人を一切雇えないマップや、逆に宗自体は攻撃ができないマップなど、変化に富んだ遊びが用意されている。 これらのメカニクスの根本を支えているのが、通貨に相当する「結晶」だ。昼のあいだに結晶を貯め込んだ「穢れ」というオブジェクトを祓うことで、結晶は手に入る。穢れを祓うためにマップを効率よく回り、壊れた橋や櫓を修理しながら、村人を効果的に配置することが求められるが、そんなに時間の猶予はないので、準備の段階からハラハラできる。 さらに面白いシステムなのが「霊道」だ。宗が世代の前に立って、黒く淀んだ道を一直線に駆けていくのだが、これにも結晶を支払う必要がある。祓った分だけ世代がゆっくりと進み始め、最終的に彼女がマップの端に到着すればクリアというわけだ。 最初はこの霊道の意味がよくわからなかったが、これはつまりタワーディフェンスにおける最終防衛ラインが前後するということであった。 つまり、結晶を強い村人の雇用に当てすぎてしまうと、この霊道を満足に敷けず、いつまでも世代がマップを進んでくれない。逆にいきなり霊道をがっつり敷いてしまうと、世代が敵陣のど真ん中まで進んでしまい、四方八方から狙われる……というわけだ。 霊道をどの程度進めるか、どこで世代を止めるかといったことは細かく決められるので、よくよく考えて行動しよう。とはいえ、この霊道の制御によって難易度が大きく上下するマップがあまりないことは、やや物足りない点ではあったが……。 アクションに関しても、最初の数マップこそ退屈だが、徐々にやれることが増えてきて面白くなっていく。そのうち、大型の畏哭を見かけたら、宗が一目散に駆け寄って1対1で戦い、そのあいだに村人たちが横を素通りしていく雑魚の畏哭を潰す……といったような役割分担が自然にできてくるので、みんなで共闘している感じが出てくる。 村人たちも、最終的に12個の職業に就かせることができるが、どれもこれも一長一短であり、明確にマップごとに適正が用意されている感じなので、パズル的楽しみがある。特にいくつかのマップをクリアすると現れるボスステージでは、村人たちに号令をかけて戦線を上下させる必要が出てくるため、まるで別のゲームをやっているような感覚すらあった。 ■こってりした和風のアートと、静かに進むストーリー 本作で注目しておきたい点はまだある。和風の世界観でありながらしっかりとしたオリジナリティを感じさせるアートと、物静かだが確実に印象に残るストーリーだ。 本作はステージクリア型のゲームでありながら、遠景が美しく、色とりどりの自然を楽しむことができる。 一度クリアしたマップに入ると、そこでは拠点復興というミニゲームが始まり、村人たちに指示して、壊れた像や倒れた家屋を修復できるのだが、このクリア済みマップを歩き回るのが存外に楽しい。犬や豚などがそこら中をうろうろしており、ちょっとだけふれあうこともできる。 ゲームの作りが道を切り開いていくものであるためか、バトル用のマップはどれも細長く、山道や林道といったあまりゲームでは見られないロケーションが多いのも良かった。 また、最も目を引くのが畏哭のデザインだろう。餓鬼、つるべ落とし、塗仏、しょうけら……といった鉄板の妖怪たちが、ドロドロとした青白い油彩画のテイストで描かれており、かっこよさと気持ち悪さが同居している。見た目通りの性能で、初見殺しが少ないのもグッドだ。 最後に、ストーリーについてもネタバレしない程度に触れておこう。ほとんどの背景は「絵巻」という村の復興で得られるロアで語られるため、本筋のストーリーは大したスケールではなく、セリフもほぼない。しかしながら、充分に面白いものであった。 人の欲望が招いた災いである畏哭……それらを踊りでもって抑えようとする世代。彼らは旅の果てに何を見るのか。大きなどんでん返しはなかったが、納得感に満ちた旅路であった(ラスボス戦のあとに一点だけ驚けるポイントがあるので、ぜひその目で確かめてみてほしい)。 ■繰り返しが多いことをもう少しケアしてほしい……気になる点 プレイ中に、気になった点は以下のとおりだ。 本作では、村人たちを恒久的にアップグレードするために、クリア済みのマップに再挑戦して「産霊(むすび)」というアイテムを稼ぐ必要があるのだが、いちいち穢れを祓うために隅から隅まで再び歩き回る必要がある。たしかに効率よくルートを考えるのは面白いのだが、何度も行うのは面倒に感じた。 また、宗のビルド(「鍔」や「魔像」というアイテムで性能を変えることができる)を変更するには、クリア済みの拠点の天幕に入るか、ステージで失敗しなければならないので、もう少しアクセスが簡単でも良かったと思った。 後半に、お決まりのボスラッシュが用意されているが、こちらもちょっと固くなったボスと連戦させられるだけなので、あまり面白いとは感じられなかった。 これはやや好みが分かれるところだが、筆者としてはもっとユニークな仕掛けに踊らされたかったというのが本音だ。全体的に大人しいギミックのマップが多かったので、そのあたりはDLCやアップデートなどで期待したいところだ。 などなど、いくつかの点において気になりはしたが、唯一無二のゲーム性でありながら、全体的によくまとまった一作だった。 以上『祇:Path of the Goddess』のクリアレビューをお届けした。ぜひともみなさんもプレイしていただき、世代が美味しそうに頬張る和菓子のモデリングにびっくりしてほしい。
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