「意思決定がブラックボックス化」の指摘も 2年目を迎えた小池都政
東京都の小池百合子知事による都政が2年目に突入した。28日からは、豊洲市場移転へ向けた追加の土壌汚染対策工事費などを盛り込んだ約55億円の補正予算案を審議する都議会臨時会が始まる。 【写真】都議選で議論になった「二元代表制」 知事と地方議会の理想の関係は? 小池知事は昨年8月2日に就任以来、東京五輪の会場見直し、築地市場の豊洲移転延期などの方針を打ち出した。7月の都議選では、地域政党「都民ファーストの会」を率いて第1党に躍進させた。情報公開の重要性を訴えてきた小池知事だが、一方で、都政改革本部や市場問題プロジェクトチームなどにみられる都顧問を重用した手法によって「意思決定過程がブラックボックス化した」という指摘もある。都政1年目の評価と2年目の課題について、識者に聞いた。
「都政をオープンにしたのは大きな成果」
東京五輪・パラリンピック会場では、小池知事が立ち上げた「都政改革本部」が昨年9月、ボート・カヌーの会場などの講義会場見直しや経費削減を提言。小池知事も「復興五輪」の観点から宮後県への会場移転の意義を訴えたが、五輪組織委員会や国などとの協議の中で、最終的に場所については当初案のままとなった。 市場移転問題では、築地市場から豊洲市場に移転して昨年11月に開場予定だった方針を見直し。豊洲市場の地下水モニタリング調査が継続中だった点などを踏まえて昨年8月に移転延期を決めた。さらに同9月、豊洲市場の土壌汚染対策として行われているはずだった盛り土が行われていないという事実を公表。都側が都議会で「盛り土が行われている」という旨の虚偽の答弁をしていたことも明るみに出た。 小池知事は「専門家会議」を再招集し、「市場問題プロジェクトチーム」や「市場のあり方戦略本部」を相次いで立ち上げ、市場移転問題を議論。今年6月、最終的に小池知事が「豊洲市場に移転し、築地は再開発」という基本方針を決定した。 元三重県知事の北川正恭(まさやす)早稲田大名誉教授(72)は「都民の代表機関である都議会の場で、盛り土がないのにあると言ったのは、都民に対して嘘を言ったのと同じこと。このような都政の現状をオープンにしたのは非常に大きな成果」などとして、小池都政の1年を高く評価する。 2017年度の予算編成では、各政党・会派の求めに応じて予算を配分する政党復活予算(約200億円)を廃止した。北川氏は「執行権者が執行権を放棄して(政党復活予算として)議会に任せたら、誰がチェックするのか。(東京都が)自治体の体をなしていないということをあからさまに証明した」と指摘。「ここまで問題点をいくつかクリアにしたのという点では小池都政に高い評価を与えて良い」と話した。 これに対し、佐々木信夫中央大教授(69)は「都政や都議会の古い体質を変える手がかりを示した」と一定評価する一方で、「中央卸売市場の豊洲移転も五輪施設の見直しも、『問題提起をしただけで、解決はしていない』『特別顧問を重用し、議会や職員、都民に相談なく進めるワンマン都政』との批判も強かった」として、功罪の両面を併せ持つとの見方を示す。 東京五輪の会場問題では「ボート場を宮城県に移す、と言ってみては撤回するなど、思いつきで関係県を振り回した結果、関係知事らの信用も失った」と指摘。市場問題でも「移転の延期を一方的に決めるなどで市場関係者の信用を損なったほか、豊洲市場の風評被害を全国に拡散させた」と批判した。