現金離れで銀行店舗「ひそかに」激変? 三井住友らが進める「銀行カフェ」とその狙い
なぜ「銀行カフェ」を相次いで開店させるのか?
ピーク時の1990年代にみずほ、三菱UFJ、三井住友の各メガバンクで700~1000店超あった店舗は、2023年時点でそれぞれ300店台にまで減少したと、江戸川大学の杉山 敏啓教授の調査が明らかにしている。 ギリギリまで店舗数を減らした銀行は次に、機能を絞り込んだ低コストの「軽量店」展開を始めた。しかし、事務のみをこなす軽量店ではビジネス拡大の限界が見え始めた。 そこで、個人顧客の相談を受けられる店舗の重要性が再認識されたのだ。加えて、従来型のカウンター顧客対応の支店では若年層を取り込みにくいことも認識された。 そうして生まれたのが敷居の低いカフェ併設型支店であり、若い顧客のニーズに対応する金融機関が増えているわけだ。
米国ではなんと「1年で492店閉鎖」
翻って、米国も同様に街角支店の閉鎖が現在も進行中だ。米金融業界誌のアメリカン・バンカーによれば、2023年7月から2024年6月の1年間に、上位5行だけでも全米492の支店が閉鎖された。 米国でフルサービスの銀行支店を立ち上げる費用は平均200万~400万ドル(約2.8~約5.7億円)で、6人の常勤スタッフで営業する年間経費は100万ドル(約1.4億円)とされる。さらには、儲けを出せるようになるまでに10年はかかると言われる。 支店運用の大規模な投資に見合うリターンを出せない店舗が、投資家からの圧力で閉鎖されるのは自然な成り行きだ。下図で示した米大手行における過去1年間の支店数増減を見ると、米預金高ランキング第3位であるウェルズファーゴの239店減を筆頭に、6位のPNCバンクの124店削減、5位のUSバンクの103店閉鎖など、オンラインバンキングへの移行による支店閉鎖の勢いが落ちていないことがわかる。 1929年の世界大恐慌後に、銀行の信用と威信を示して顧客の信頼を回復すべく建設された重厚で高い天井を持つ大理石造りの美しい支店の多くが、1990年代以降に設置された機能型の店舗などとともに姿を変えつつ、あるいは消えつつあるのだ。