不満ぶつけられるF1ピレリタイヤ、ウォーマー廃止計画の棚上げで改善進む? 「目標が明確化された」とエンジニア
2027年までF1にタイヤを供給することが決まっているピレリ。タイヤウォーマーの廃止が棚上げされたことで、2025年以降に向けたタイヤ開発においてオーバーヒートの問題解決により集中できるようになると考えている。 【動画】F1ドライバーにMotoGPライダー……世界のホンダがもてぎに集結! ホンダ・レーシング・サンクスデー2023 現在ピレリは、ドライバーが“全開で走り切る”ようなレース展開をタイヤが妨げているという批判を関係者から受けている。ドライバーたちはタイヤのオーバーヒートに対処しなくてはならない現状を訴えており、サーマルデグラデーション(オーバーヒートによる性能劣化)の激しさからタイヤを冷やすためにペースを緩める必要を強いられることが多いためだ。 タイヤのオーバーヒート問題はF1委員会でも取り上げられており、問題への対処と将来的にタイヤのレース性を向上させることへ焦点を当てるように求められている。 なおF1委員会では同時に、当初予定されていた2025年のタイヤウォーマー廃止が棚上げされることも決まった。ピレリにしてみれば、ウォーマー廃止を気にする必要がなくなったことで、タイヤ開発がやりやすくなるという副次的な効果も期待できるだろう。 ピレリのF1チーフエンジニアを務めるシモーネ・ベラは、今回のF1委員会での決定によって、より開発の方向性が明確になったと語った。 「少なくとも今、目標は明確になっているし、数週間前と比較しても明確化された」 「我々は新世代のコンパウンド生産のため、2024年に開発テストに取り組む必要がある。それが目標だ」 「構造面でもタイヤの信頼性向上に取り組み続けるつもりだが、2024年の開発プランではコンパウンドに焦点を当てていて、我々は明らかにオーバーヒートにより重点を置いている」 ベラは今年大きな問題となったオーバーヒートを適切に把握するために、2023年のデータ解析を行なうことが、ピレリとして最初のステップだと語った。 「2022年から2023年にかけて、なぜオーバーヒートの影響が大きくなったのかを理解したいと思っている」 「シーズン終了後の分析のあと、その面を改善するためにコンパウンドのどの点に取り組むべきかを解明しようと思っている」 「当然だが我々はドライバー達にタイヤの温度マネジメントをするのではなく、できるだけプッシュしてもらいたいと思っている。我々側からしても、それが目標なんだ」 なおオーバーヒートに対してはタイヤの構造、特にショルダー部分に起因するという指摘もあるが、ベラはあくまでも問題はコンパウンドの選択にあるという考えを示した。 「構造の問題ではないと考えている」 「オーバーヒートのコメントがある時も、それは本当のオーバーヒートではないと考えている。ドライバー達はグリップの不足やグリップの低下を感じているだけで、場合によってはグレイニングや摩耗、またはその他の理由によってタイヤに劣化が発生しているだけのときもある」 「過去にオーバーヒートのコメントがあったが、本当にオーバーヒートだったわけではなかった」 「ただオーバーヒートが問題になったレースもある。特にリヤが高温の影響を受けていた。だから我々としては、本当の理由がどれなのかを区別する必要があるんだ」 「私はオーバーヒートが懸念されるコンパウンドにもっと取り組まなければと考えている。言うまでもないが、この構造でも取り組みは可能なんだ。より信頼性の高いタイヤを使い、内圧を少しでも下げることができれば、当然オーバーヒートの影響を軽減できる。接触面が増加し、温度がより均一になるからだ」 「もちろん、コンパウンドが全てを変えるわけではないのも確かだ。だからコンパウンドは構造と一体的に機能するべきであり、だからこそ我々はその両方を一緒に進歩させる必要がある」
Jonathan Noble
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