石破氏提唱の“アジア版NATO”に海外から冷たい目 日米関係への悪影響、懸念も
■“アジア版NATO”
石破氏が提唱する“アジア版NATO”が波紋を広げている。先月25日、石破氏はアメリカのシンクタンク・ハドソン研究所に「日本の外交政策の将来」と題する論文を寄稿。この中で石破氏は、アジアにはNATOのような集団的自衛体制がないため「戦争が勃発しやすい状態にある」とし、「この状況で中国を西側同盟国が抑止するためには、アジア版NATOの創設が不可欠」だと主張した。 【動画を見る】石破首相の所信表明演説ノーカット 冷戦下の1949年、旧ソ連から西側諸国を守るために設立されたNATO(北大西洋条約機構)。現在はアメリカやイギリス、ドイツやトルコなど32か国が加盟し、いずれかの国が武力攻撃を受けた場合、NATO全加盟国への攻撃と見なし、共同で反撃を行う「集団的自衛権」を規定している。 この“アジア版”の創設を石破氏は提唱しているのだ。寄稿文の中で石破氏は、北朝鮮や中国の核開発により、インド太平洋地域でアメリカの"拡大抑止"は「機能しなくなっている」とし、それを補うのがアジア版NATOだと主張。また対等な日米同盟を目指し、在日米軍の法的地位を定めた日米地位協定の改定についても提案。アメリカの核のシェア(共有)や、核の持ち込みも検討せねばならないとした。
■アメリカ、インドも…
“アジア版NATO”について、海外の反応は冷ややかだ。アメリカ国務省のクリテンブリンク国務次官補は「時期尚早」と述べ否定。ワシントン・ポストは「ワシントンでは懐疑的な見方が多い」と報じた。インドのジャイシャンカル外相も1日、「我々はそのような戦略的な枠組みは考えていない」と支持しない考えを表明。「我々には異なる歴史があり、異なるアプローチの方法がある」と述べた。
■専門家は
アメリカのシンクタンク・CNASのリチャード・フォンテインCEOは“アジア版NATO”について、「インド太平洋の将来の安全保障について、広範に考えることは歓迎すべきことであり、非常に長い目で見れば可能性はあるかもしれない」としつつも、「短期的には不可能」と断言する。「この地域で、アメリカは日本、韓国、オーストラリア、フィリピン、タイと同盟を結んでいるが、いずれの国も互いに同盟を結んでいない。日本と韓国の間には、おそらく永遠に消え去らないであろう歴史的な緊張関係があるし、インドは他のどの国とも同盟しておらず、同盟を望んでもいない」と解説する。