円上昇して一時153円後半、米長期金利上昇一服-財務相けん制発言も
(ブルームバーグ): 19日の東京外国為替市場の円相場は1ドル=153円台後半に一時上昇した。日本銀行の植田和男総裁の前日の発言を受けた売りが一巡したほか、米長期金利の上昇が一服したことで円買いが優勢だ。加藤勝信財務相の円安けん制発言も円買いにつながっている。
ソニーフィナンシャルグループの石川久美子シニアアナリストは、米長期金利が下げたほどにはドルが下げておらず、その分を調整している感じと指摘した。トランプトレードでドルが大きく上昇した後、新たな材料待ちの状況で「15日、18日にサポートされた153円80銭付近を割り込むと、21日移動平均線の153円35銭付近まで下げもおかしくない」との見方を示した。
加藤財務相は19日の閣議後会見で足元の為替動向について、投機的な動きを含めて「高い緊張感を持って注視するとともに、行き過ぎた動きに対しては適切な対応を取る」として従来のスタンスから「全く変化はない」と語った。改めて円安をけん制したとの見方から円の支えとなっている。
日銀の植田総裁は18日の講演で、金融緩和度合いの調整を進めるタイミングについて「あくまで先行きの経済・物価・金融情勢次第だ」と述べ、毎回の金融政策決定会合でデータを点検しながら政策を判断する姿勢を示した。
円は対ドルで同日朝方に153円84銭と約1週間ぶりの水準まで上昇したが、総裁発言を受けて売られ、海外時間に一時155円36銭まで下落した。その後は米長期金利が低下に転じる中でドルが軟化し、円は154円台後半に戻していた。
三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、トランプトレードの反動でドル買い・円売りポジションを落とす動きが続いていると話す。
酒井氏は、日銀の植田総裁の発言には目新しい内容はなく、むしろ金融緩和度合いが強まっていると述べるなどハト派的だったと酒井氏は指摘。ただ、「円安を止める手だてや、金融政策見通しのパスにおおむね沿った動きであれば利上げを粛々と実施していくという裏付けになる」とし、「12月は利上げを行う」との見方を示した。