難病と闘う28歳漫画家の作品が演劇に!思ったことを何でも口にして孤立する小学生が主人公 【静岡発】
静岡県浜松市で演劇の公演が行われた。演劇の原作者は磐田市在住の漫画家だ。彼は難病と闘いながら「生きた証を残したい」と漫画を描き続けている。15分以上座ると下半身に痛みが生じるため、立ったまま描き続ける彼の漫画が多くの共感と支持を集め舞台化された。 【画像】難病と闘う28歳漫画家の作品が演劇に
5年前に難病を発症
2023年10月、磐田市で舞台の出演者を決める劇団のオーディションが行われた。 「目に見えないものを信じさせてくれる。想像力をかき立てたりするのは、芸術が持っている最も尊い力。そういうものを作れたら」と、思いを口にしたのは作品の原作者で脚本を手掛ける磐田市在住の漫画家・寺田浩晃さん(28)だ。 寺田さんは2018年に治療法が確立されていない「好酸球性胃腸炎」という難病と診断された。食べ物が原因でアレルギー反応が起こる難病だ。寺田さんは難病と闘いながらも「生きた証を残したい」と漫画を描き続けている。 作品は単行本として出版され、実写ドラマ化されるなど注目された。
作品が初めて舞台化
今回初めて舞台化されるのは、寺田さんの短編集「黒猫は泣かない」に収録されている「くろいりんご と きいろいそら」だ。 主人公は疑問に思ったことは授業中でもかまわず質問し、孤立しがちな小学生の男の子だ。風変りなギターを弾く男性との触れ合いや、揺れ動く男の子の心が繊細に描かれていて、自分に大切なものとは何かを問いかけてくる。 演出を担当する大谷賢治郎さんも作品に共感した一人だ。 演出家・大谷賢治郎さん: 声が届かない所にいる子供たちがたくさんいて、それが明確に描かれている。この物語が伝えようとしているエッセンスが立体化することによって、別の形や芸術媒体で観客と分かち合えたら 公演するのは全国各地に笑いや感動を届け、これまでの公演回数は4万5000回にのぼる「劇団たんぽぽ」。78年の歴史をもつ劇団にとっても漫画の舞台化は今回が初めてで大きな挑戦だ。
300万円超の寄付が集まる
制作費の確保と1人でも多くの賛同を得てこの作品を世に出したいと、2023年7月に行ったクラウドファンディングでは目標額300万円を超える寄付が集まった。 劇団たんぽぽ・久野由美 事務局長: 厳しい声を受けることも覚悟だった。「作品を作りたければ自分たちで作ればいい」「作れないのであれば作らなければいい」という声があってもおかしくないと思っていたが「頑張って」という声もたくさんもらったので、やって良かった。すごくうれしかった 出演者も決まり、この日は東京から照明や美術のスタッフを招いての初顔合わせ。劇団や原作者から作品への熱い思いが語られた。 劇団たんぽぽ・久野由美 事務局長: 出版社からの持ち込みは本当にまれでみんな驚いた。内容が衝撃的で、これを私たちは舞台化できるのかずっと劇団で話し合いを続けた。劇団のみんなが「これをやりたい」という思いが強くなったので、みんなでこれを作ろうということになった 漫画家・寺田浩晃さん: 他人から見たらゴミだろうが無価値だろうが「これが大切なんだ」と自分に言えるものを持つことはすごく大切なこと。そういう生き方があることを、いまの子供たちに伝えられたら 初めての読み合わせも行われ、いよいよ作品の新たな船出となった。