創業133年の沼津の駅弁業者が、美味しい駅弁を届けるための工夫とは?
●そのとき、そのときに、「冷めても美味しい」いちばん美味しい米を届けたい!
―ご飯や酢飯には、どんなこだわりがありますか? 宇野:その時々で冷めてから召し上がっていただくときに、いちばん美味しい米を使うようにしています。選定するときは、弊社社員みんなで試食をしながら決めていきます。ときには3ヵ月に1回くらいの短いスパンで変更することもありますし、その年の収穫状況によって、産地を変えることもあります。炊き方はガスの丸釜で炊いています。酢飯の酢は、甘めの味に調合するのが伝統です。この部分は今後も守っていきたいと思います。 ―沼津は魚介の駅弁も多いですが、食材の仕入れ等での工夫、ご苦労はありますか? 宇野:アジは地元産を中心に、静岡の近海ものを使うようにしています。鯛も沼津産です。桜えびに関しては、漁獲が減って価格が上がっていることもあり、台湾産を使っています。最近は「あしたか牛」「箱根山麓豚」など肉を使った駅弁も多いですが、地元のJAさんの協力をいただきながら製造しています。あしたか牛は赤身が多い分、サッパリとした味わいが特徴で、脂も扱いやすい良質な牛肉ですね。
●地元JAとの協力体制を築きながら、新たに冷凍技術も導入!
―確かにJAさんとのコラボ弁当が多いですが、どんな繋がりがありますか? 宇野:JAさんとは古いお付き合いです。安定的な食材の供給にJAさんのご協力は欠かせません。静岡県東部はJAさんが全て合併しまして1つの「JAふじ伊豆」になりました。大きなJAさんとお付き合いできているのは大変有難いですね。 ―コロナ禍以降、「冷凍駅弁」の開発もされましたが、その理由は何でしょうか? 宇野:1つは、静岡の美味しいものを駅で売るだけではなく、いろいろな地域にお届けしたい思いからです。もう1つは、県内産の食材は獲れる時期が決まっているため年間を通してお客様にそれらを使った駅弁をご提供することが難しいといった課題がありました。そこで冷凍技術で安定した量を予め確保しておいて、弁当食材として使っていくことも必要と考えたからです。また、弁当の需要は日によって大きな差がありますので、できるだけ平準化の努力をしないと、社会の変化に対応できないかと。