「身近な人から『無神経』とよく言われます」 精神科医Tomy先生がアドバイス
精神科医Tomy先生が、ビジネスパーソンのさまざまな悩みに向き合う「精神科医Tomyの心のコリ解消法」。今回は「自分の無神経さを改善したい」というお悩みです。身近な同僚や友人、家族から「あなたは無神経だ」と言われることが多く、改善したいと悩む男性にTomy先生がアドバイスします。 【関連画像】今日のサプリ。理由を考えるより行動パターンを変えるほうが楽よ まずはゆっくり話す 相手の話を聞く ●気を付けていても、なぜか相手を怒らせてしまいます 今回悩みを打ち明けてくれたのは、食品メーカーで働く隆之さん(仮名)です。本人には全く悪気はないものの、なぜか自分の言動によって相手を怒らせてしまうケースが多くあるといいます。 同僚や家族、友人など身近な人に「無神経」と言われ、気を付けているものの、何度も同じことを繰り返してしまう。それがもともとの性格だとすれば、直すのは難しいのではないかと隆之さんは感じているようです。それでも、このままだと友達をなくしてしまったり、大事な家族に愛想を尽かされてしまったりするのではないか、と不安に感じています。 「Tomy先生、無神経な性格を直すにはどうすればよいでしょうか?」
話す量を半分に減らしてみて
身近な人からよく「無神経」と言われてしまうという隆之さん。そのことを気にしている時点で、隆之さんは無神経な人ではないと思いますよ。問題は言動における表現の仕方にあるのではないかと推察します。 まず、無神経、つまり相手の気持ちが分からない人は、自分の話をたくさんしすぎる傾向にあります。そのため、口数をいつもの半分くらいに減らすように意識してみてください。相手が1話したら、自分も1話す、というイメージです。 たまに、相手に話す隙を与えずにひたすらマシンガントークをする人がいますが、自分が調子良く、楽しくなっているときほどそうなりやすいので注意が必要です。 話すスピードも大事です。相手のことをあまり考えずに、自分の言いたいことだけをバババッと話していないでしょうか。話すテンポをゆっくりにしながら、相手が話し終わるのを待った上で、自分が話すようにしてみましょう。さらに、声のトーンも少し落としてみてください。 これらの話す量、スピード、トーンを変えるだけでも、相手に与える印象はかなり違ってきます。 また、話をするときは、相手の表情や口の動きなどをよく観察してみてください。口が動いたら相手が話そうとしているサインなので、自分の話をかぶせないことが大事です。こうして、自分の行動を変えてみるのが最も簡単にできる対策の1つになります。 ●どちらか一方だけが悪いなんてことはないの 自分のどういったところが無神経なのか気になる場合は、周囲の人にアドバイスを仰ぐのも1つの方法かもしれません。「無神経な発言が多いかな。最近だと何かイラっとしたことあった?」などと聞いてみる。そうすると、場にふさわしくない表現だったり、ストレートすぎる表現を使っていたりしたことが分かるでしょう。つまり、言葉のチョイスによって相手を不快にさせているわけです。 実のところ、アドバイスを聞いたからといってすべてを受け入れる必要もないのですが、相手の言い分を聞く機会をつくるだけでも、関係性が良好になる場合があります。 そうした指摘に対応しつつ、会話中に相手の表情が曇ったり、驚いてイラつくような素振りが見えたりしたら、すぐに自分自身の言動を振り返りましょう。不適切な表現をしてしまったことが分かったらすぐに素直に謝り、本意を伝えてみる。そうやって、改善していくしかありません。 ちなみに、営業などの顧客渉外の仕事を担当している人が、無神経な発言によってクライアントとトラブルを起こすようであれば、それは先輩や上司がしっかり営業トークを教える必要があります。営業トークのテクニックは、上手な人のまねをすることで習得できます。その人の性格に関係なく、技術、スキルとして学んでいくものです。仕事とプライベートは別と考えましょう。 そもそもの話になりますが、自分の気持ちであってもよく分からないことがあるのに、他人の気持ちを察するなんて、そう簡単にできるものではありません。分からないものは分からないですし、正解もありません。 もちろん、自然と相手の気持ちを想像し、思いやれる人も中にはいます。でも、今できていない人が無理をして頑張ろうと思っても、むしろ、しくじる可能性の方が高い。だから、相手を理解しようとするよりは、相手を不愉快にさせないようにすることを考えましょう。そのためにも、相手の話をきちんと聞くことが大事なのです。相手の話を聞こうとする姿勢があれば、無神経とは言われないはずです。 ただ、相手のことは完全には理解できない前提で、相手の立場に立って考える機会をつくるのはお勧めです。このような言葉をかけたら、相手はどう思うだろうか、と想像してみる。その訓練はやっても損はないと思います。 人間関係は相互作用なので、基本的にどちらか一方だけが悪いということはありません。無神経だなと思って腹が立ったとしても、相手に悪気がなくて、その人のことが嫌いでなければ、「この人はそういう人なんだ」とある程度妥協してくれることも少なくありません。「今の言い方はちょっとどうかと思うよ」と相手に言ってもらえるような関係が築けるといいと思います。 人と人との付き合いで、何1つ相手を不快にさせない人なんていません。どうしても合わないなら、その人とは関係を続けなければいいだけです。 相手のことを尊重しすぎるあまりに、自分を押し殺す必要はありません。私は、相手の気持ちが分からないことよりも、相手の顔色をうかがいすぎて自分の意図を伝えられないことの方が、根深い問題だと感じます。 だから隆之さんも自分にできる限りのことをやってみて、たとえうまくいかなくてもあまり気にしすぎず、無理のない人間関係を築いてほしいと思います。 取材・文=尾越まり恵
Tomy