大洪水に見舞われた被災地を訪れ、民衆から泥と罵声を投げつけられたスペイン国王夫妻「フェリペ治世の最も偉大な日として語り継がれるだろう」
10月29日から30日にかけて、スペイン東部のバレンシア州などで記録的な大雨による洪水が発生し、車や橋が流されるなど甚大な被害が出た。米「CNN」によれば少なくとも217人が死亡しており、その数はまだ増えると予想されている。 そんななか、支援の遅れに不満を募らせた住民が、被災地を訪れた国王夫妻に泥を投げつけるという異例の事態が起きた。 スペイン紙が報じた志摩スペイン村「忠実だけど大胆なアレンジも!」
遅れる支援に怒りが止まない市民
フェリペ国王とレティシア王妃は3日、ペドロ・サンチェス首相やバレンシアのカルロス・マゾン州首相と共に、大きな被害を受けた町のひとつであるパイポルタを訪れた。 スペイン紙「エル・パイス」によれば、彼らは民衆から「温かい歓迎を受けるどころか『人殺し』、『シャベルを持て』といった罵声を浴びせられた」という。暴徒化した一部の人々が泥や物を投げつけ、それによって警官隊の車が一台損壊した。 レティシア王妃も水をかけられ、泥まみれになった。ショックを受けた様子の彼女に向かい、ある女性が「あなたが水不足になることなんてない! 何だって持っているだろう!」と怒鳴りつけたと報じられている。 洪水によって何もかもを失った住民たちは、被災した初日から支援が足りていないと訴えてきた。市民の自主的なボランティアによって助けられている一方、国のサポートは遅れている。
「フェリペ治世の最も偉大な日」
米公共ラジオ局「NPR」によれば、この騒動は「極右勢力が組織的に国王や首相らの訪問を妨害しようとした」ことによって起きた可能性があるようだ。サンチェス首相にも物が投げつけられたが、これは、極右政党「ボックス」(VOX)の台頭によって二大政党制が揺らいでいるスペインの「政治的分断の激化を象徴している」という。 首相が警備隊に連れられて町を立ち去った一方で、国王夫妻は市民と話をするために残った。これは「スペイン人の記憶に残り、象徴的な瞬間になるだろう」とNPRは報じている。 また「AP通信」によれば、国王は傘で自らを守ろうとしたボディーガードを下がらせ、声を聞くために市民に近づいたという。レティシア王妃もまたその場に残り、悲しみと怒りに感情が昂っている人々の話を聞いた。 バルセロナ自治大学の政治学教授、オリオール・バルトメウスは一連の事態を受け、AP通信に対して「フェリペ治世の最も偉大な日として語り継がれるかもしれない」とコメントし、次のように語っている。 「もし彼がボディーガードの保護を求め、逃げ出していたら、それは彼の治世で最も暗い日になっていたでしょう。しかし、彼はなぜ自分が王であるかを示しました。落ち着きと冷静さを見せ、民衆にできる限り近づいたのです」 洪水で破壊された町はまだ泥に埋もれており、わかっている限りで89名の行方不明者がいる。サンチェス首相は被災者支援に106億ユーロを割り当てると発表した。
COURRiER Japon