ホロライブ・猫又おかゆ、デビュー5周年に寄せて 自由奔放な振る舞いが魅力な“猫の足跡”をたどる
2020年代のインターネットカルチャーにおいて、重要な位置を占めているVTuber~バーチャルタレントシーン。そのトップランナーといえるのがホロライブ/にじさんじであり、両者は国内外において巨大なファンダムを築き上げ、連日の配信を通して多くのファンを魅了している。 【動画】生誕記念ライブで披露された「ネコカブリーナ」 そのなかでもシーンの初期から現在に至るまで熱烈な支持を受けているのが、ホロライブである。ライブ配信と音楽展開を中心にし、ホロライブメンバー同士が親密な関係を築いていく様子や、個々人が目標・夢に向かって邁進していく姿を配信を通して表現しつづけたことで、彼女らの姿に勇気づけられたファンを数多く生み、現在の熱狂的なファンダムを築き上げることになったのだ。 現在ではテレビ番組への出演や商品の広告塔として、あるいは音楽アーティストとしても起用されるようになり、より広い層に認知されつつある。彼女らの足場・基盤となるライブ配信とも兼ね合わせ、今後もその傾向は変わらないだろう。 そんなホロライブのメンバーのなかで、本日4月6日にデビュー記念日を迎えたタレントがいる。ホロライブゲーマーズとしてデビューを果たした猫又(ねこまた)おかゆである。今回は彼女の記念日にあわせ、その足跡を辿ってみようと思う。 ■ホロライブゲーマーズに“超スピード”で合格を果たした猫又おかゆ 2019年4月6日、当時白上フブキ、大神ミオの2人が所属していたホロライブゲーマーズの3人目としてデビューしたのが猫又おかゆであった。 すでにVTuber~バーチャルタレントとして活動していた白上・大神の2人からホロライブを紹介してもらい、社長である谷郷元昭との直接面接の元に合格し、猫又個人からの薦めで友人であった戌神ころねも同時期にデビューすることとなり、ホロライブゲーマーズは現在の4人体制となった。彼女ら4人については、後日執筆させてもらおうと思う。 ちなみに猫又の言葉を借りれば、面接を受けたその日に合格の連絡が来たという“超スピード合格”だったようだ。当時は運営元であるCOVER社もまだ気鋭のスタートアップ企業であったこともあり、いかに才能・人材を欲していたかがうかがい知れるエピソードだ。 イラストレーター・神岡ちろるによって描かれた姿は、薄紫の髪色、長めのボブカット、「猫」をモチーフにしたことでスポーティーな服装だ。特徴的なのは、他のホロライブメンバーよりもすこし低めかつ柔らかい声質にあり、当時のホロライブにはあまり在籍していなかった少年味を感じさせるメンバーということで話題を集めたのだ。 猫又おかゆの配信でもっとも人気を博しているジャンルといえば、ASMR配信である。 その始まりは、チャンネル登録者数4万人を突破したことに合わせた記念配信で、当初はあまり知識がなかったこともあって、癒月ちょこ、夜空メル、アキ・ローゼンタールといった先輩たちの配信を見習ってのスタートだった。 このとき猫又は活動開始から数ヶ月ほどのタイミングで、本人としてもちょっとした思いつきでASMR配信をしてみよう、という程度に考えていたはず。まさか自身の配信活動のなかでもっとも支持を集めるコンテンツになるとは、ファン含めだれも想像できなかったはずだ。 ホロライブのなかでASMR配信で人気を集めているメンバーといえば、ロボ子さん、癒月ちょこ、白銀ノエル、雪花ラミィなど、さまざまな面々が思い浮かぶ。いずれのメンバーも声色が高めであるのに対し、猫又の声は前述したとおり若干低めかつソフトな質感だ。これがコンテンツの特性にマッチしており、多少大きめの音量で聞いていても耳があまり疲れることがなく、むしろ低めの声色という点に心地よさを感じられる人は多い。 2020年ごろまでは数ヶ月に1度のペースでおこなっていたASMR配信だが、2021年に入って以降は配信頻度があがっていくこととなる。現在ではYouTubeチャンネルのメンバーシップ限定配信のなかでも、さまざまなシチュエーションでのASMR配信をしている。 ホロライブの公式グッズボイスにも何度となく起用されており、彼女の代表的なコンテンツに育ちつつある。「ASMRが上手なホロライブメンバーといえば?」と問えば、癒月ちょこ、白銀ノエルらとともに、猫又おかゆの名を挙げる支持者も現在では多くいるのだ。 ■自由奔放でちょっぴりセンシティブ 猫そのもののような性格が魅力 自分自身を「ボク」と呼び、柔和な表情をみせながら会話する猫又おかゆだが、じつはかなり奔放な性格をした人物としても知られている。 ホロライブメンバーの配信で面白かったシーン、オフで起こった出来事など、さまざまなエピソードを語りつつ、「ぼく思うんだけどさぁ……」と断りつつポロっと一言こぼす。そんなときの彼女は切れ味鋭い一言を放つことがあり、おなじようにしてリスナーや他メンバーにも切っ先が向かうことも。 話しをうまくまとめつつ、イジるときは抜け目なくイジり、ときとしてボケにツッコむのではなく乗っかっていく。タイミングと気分によってプイっと変わってしまう彼女のノリは、まさに「猫」そのもののようだ。 くわえて下ネタやエロにも寛容的で、明らかに狙ってそういった言葉を発することも多い。とりわけ宝鐘マリンとのコラボ配信ではセンシティブな方向に寄ってしまうことがたびたびある。 2023年末にはリスナーからの煩悩を集めて2人で読んで楽しむという趣旨の配信を行ない、同時視聴者数が平均して5万人前後を集める特大ヒットの配信となった。宝鐘と猫又の2人のみでおこなう配信はこのときが初めてだったようだが、企画趣旨に沿ったキワドい内容のお便りはもちろんのこと、なんでもない普通のお便りをもナチュラルに“そっちの方向”へとシフトしていくという、高い連携力を見せてくれたのだ。 ちなみに、これを見てあわてた宝鐘のマネージャーから、配信中にもかかわらず注意を促すチャットが届いたほどであったとか。もしかすると、「組んではいけない2人」が組んでしまったのかもしれない……。今後も2人による配信があれば、要チェックだ。 もちろん、猫又は他にも多くのメンバーとコンビ・トリオで配信を盛り上げてきた。 とくにデビュー以前から交流をしていた戌神ころねとはデビュー以降さらに仲良くなったようで、「おかころ」コンビとしてリスナーからも親しまれている。ときには仲の良さを見せつけるかのように配信上でイチャイチャとじゃれ合うことも多く、非常に良好な関係を築けているようだ。 大きな仲違いをしたこともほとんどないようで、それどころか互いの友人関係でなにか進展があれば「そういえば最近あの人とよく配信しているね」と話題に上げつつ、ヤキモチを焼いているかのような仕草や親密さを見せることもある。 先輩であれば、大空スバルとのコンビもファンにとっては知られているだろう。お互いに声色が少年味を感じさせ、髪型も短いということでボーイッシュな2人として配信をともにすることが多かった。 デビュー後さまざまな経験をしていくうちに、猫又は周囲のメンバーを自由にイジる奔放なキャラクターを、スバルはそうしたボケに対して逐一ツッコミを入れていく役回りをと、それぞれが自身のポジションを確立していくこととなる。ツッコミよりもボケたがる猫又に、ツッコミを挟んで盛り上げていく大空と、2人の関係も徐々に変化していった。 また、大空にとって猫又は“ゲームの師匠”でもある。デビュー当時からゲームに疎かった大空だったが、反対にゲームが大得意な猫又とのコラボ配信を通じてさまざまなゲームに挑戦していくこととなる。これをきっかけにして大空はゲームの楽しさに目覚め、現在ではソロ配信でもさまざまなタイトルに挑戦する立派なゲーマーとなったのだ。 ちなみに、つい先日には猫又と大空が同じくボーイッシュなキャラクターで知られる火威青とともに“ボーイッシュ鼎談”をしている。初期こそボーイッシュな人物像で知られ、現在ではそれぞれが違ったキャラクターで活動している猫又・大空が、さまざまな苦労を火威に伝えていくという内容となっている。 猫又はスバルとの関係について「僕たちは戦友みたいな感じ」と話しているが、実際には過激な言葉を発しようとする猫又と、慌ててツッコミをいれてまとめようとする大空という形で、かなり振り回されっぱなしなようだ。「おかころ」とは違った形の信頼関係が「スバおか」にはある。 ■音楽面での活躍も著しく、イメージに合致したオリジナル曲を続々リリースする ホロライブを長く見ているファンであれば周知のことであるが、ホロライブではメンバー間で頻繁にコラボ配信をすることが多く、ファンはそれらを通じて、ホロライブの同期・先輩・後輩についてある程度の人となりを知れる場面が多い。 当人同士からすれば「仲良い者同士のほうが何かと都合が良い」という理由で配信をしているはずだが、結果的にはホロライブ全体へのロイヤリティ(忠誠・帰属意識を高めることーーもう少し柔らかく表現すれば“箱推し”カルチャーの醸成に繋がり、先述したような強固なファンダムが築かれることになるのだ。 他にもさまざまな理由が重なり、基本的にホロライブメンバーとだけコラボ配信をするというスタンスのメンバーも多く在籍している。猫又おかゆもホロライブ外に多くの友人がいるわけではないのだが、たった1人、ホロライブ外のメンバーと続けているコラボ配信がある。 にじさんじの椎名唯華、彼女との「神岡家の気まぐれにゃじお」は長く続いている人気コンテンツである。イラストレーターの神岡ちろるが2人のデザインを担当していることをきっかけに、先にデビューした椎名を姉、あとにデビューした猫又が妹という関係でコラボ配信をするようになったのだ。 2019年6月27日からスタートした「神岡家のきまぐれにゃじお」は、お互いの近況やリスナーから募ったテーマをもとにしたトークが中心の内容で、スタートしてから約5年ほど経過した現在では「おかゆ」「椎名さん」と呼び合いつつ、両者の関係はかなりフラットかつフレンドリーな関係になっている。 じつはにじさんじとホロライブそれぞれに属しているメンバーが数年以上にわたってコラボ配信をしているというのは、猫又&椎名以外には星街すいせい&戌亥とこの2組のみであり、ほとんど見られないレアな構図である。 最近では椎名・猫又それぞれの事務所で仲の良いメンバーを紹介しあう流れが生まれつつあり、にじさんじ・ホロライブの間に友好の橋を架ける繋がりとして、リスナーのみならず両事務所のメンバーからも注目を集めているコンビだといえよう。 そんな猫又おかゆは、ホロライブのメンバーとしてさまざまな楽曲をリリースしている。これまでに6曲のシングルを発表しており、2022年9月6日にはソロアルバム『ぽいずにゃ~しんどろーむ』をリリースしている。 そのなかでも、デビュー曲であり、チルなヌードを彩ったソフトタッチなシンセポップ「もぐもぐYUMMY!」は、彼女のイメージ・タレントを活かした彼女の代表曲だ。 2022年には同曲に加え、ピノキオピー、FAKE TYPE.、DECO*27、すりぃ、ナナホシ管弦楽団らがコンポーザーとして参加したソロアルバムは、その声色を活かしたコーラスやボーカルプロダクションが施されており、気鋭のクリエイター陣が猫又おかゆの魅力を活かそうと試みた1枚とも言えるだろう。 同アルバムのリリースから約1年半経過した2024年2月22日には、最新曲「ネコカブリーナ」をリリース。先日開催された『hololive 5th fes. Capture the Moment Supported By Bushiroad』でもパフォーマンスを披露し、みごとファンの期待に応えてみせた。 2019年にデビューしてから今日で5年目を迎えた猫又おかゆ、猫のように囚われることなく、思うままにその活動を続けていってほしいところだ。
草野虹