子どもは薄々気づいている「この競争は無駄だ」と それでも手を差し伸べられるのは誰? 桜井信一の攻める中学受験
皆さんは「メンター」という言葉をご存知でしょうか。中学受験塾にはあまり出てこないこの言葉、実はやる気係のことなのです。医学部専門予備校には強力なメンターがいます。講師の良し悪しよりもどれくらい強力なメンターがいるかが合格実績を上げるポイント。医学部専門予備校の隠し球とでもいいましょうか。 大手の予備校にも「チューター」と呼ばれる人がいます。これはお世話係に近い。しかし、メンターはその言葉通り、折れそうになった心をサポートしたり、怠け心が顔を出すとすぐに喝を入れたりします。2、3日様子を見たりしないのです。その日のうちに対処してくるのです。 このメンターさん、私の聞いた話では女性が多い。しかも、タメ口で強烈に怖いらしい。独身が既婚かは不明。そこを聞くと誰かにメンターしてもらわないといけないらしい。 メンターに休みなんてありません。朝から深夜まで働きます。すべての書類に目を通し、全員の成績を把握しています。そして、最後の受験校を決めるのもメンターが先頭に立って判断するのです。 予備校というのはどうしても男女の距離が近くなる。団結して受験に臨むのはいいのですが、行き過ぎると恋に発展してしまう。これを遮るのもメンターの役目。「ワタシですら耐えてるのに何考えてるのっ!あなたたちは受験生でしょ!」とふたりを引き離すメンターもいれば、「オトコはね、胃袋掴むのがコツよ。受験が終わったら料理の勉強でもしなさい」と優しくおせっかいしてくれるメンターもいるのです。 中学受験には、このメンター制度がない。小学生にはあまり強く言えないから他人が関わるのはなかなか難しいでしょう。親がメンターになるのもまた厄介。破壊係になる親が多いのです。 医学部専門予備校は高い。べらぼうに高い。しかし、メンターの存在を考えると、それくらいは仕方ないと思ってしまうそうです。それくらい、うまく受験生を運んでくれるらしい。 ただし、メンターでもどうしようもない子がいます。それは、まるでやる気のない子。親に言われて嫌々来ている子。これはどうしようもないのです。少しのやる気がないと引き出せないし喝を入れることもできない。