大統領選圧勝のトランプ、中国が「2027年までに侵攻の準備整える」とする台湾問題にどう向き合う
(国際ジャーナリスト・木村正人) ■ インフレの逆風がハリス氏を押し潰す [ロンドン発]11月5日投開票の米大統領選で共和党ドナルド・トランプ前大統領が米国全体の得票数でも民主党カマラ・ハリス副大統領を上回り、予想以上の大差で復活を果たした。有罪判決で後がないトランプ氏は経済と移民問題に焦点を絞った選挙戦略が成功した。 今年10月、中国が台湾を取り囲むようにして実施した合同軍事演習「聯合利剣―2024B」の概略図(中国国防部のHPより) トランプ氏は2016年大統領選に勝ったものの全国の得票数では民主党ヒラリー・クリントン元国務長官に287万票近い差をつけられた。今回ハリス氏の選挙運動は上滑りに終わった。トランプ氏は銃撃され流血しても拳を突き上げるタフさを見せ、激戦7州を全勝した。 ジョー・バイデン大統領の4年間で米国の累積インフレは21.5%に達した。この逆風がハリス氏を押し潰したと言える。 世界は米国の孤立主義、保護主義に対処しなければならない。最大の敗者になるのはウクライナ戦争を抱える欧州だ。 そして東アジアは、台湾や北朝鮮という火種を抱えている。 3月、ジョン・アキリーノ米インド太平洋軍司令官(当時)は上院軍事委員会で「すべての兆候は、中国人民解放軍が2027年までに台湾侵攻の準備を終えよという習近平国家主席の指示を満たしていることを示唆している」と証言した。あと3年しか残されていない。
■ 「中国は戦争の準備をしている」 「人民解放軍の行動は指示された場合、武力で台湾を中国本土に統一する習氏のスケジュールを満たす能力を示す。中国が実際に国防に費やす金額は中国が公にしている額より多い。第2次大戦以来、米国はこのような脅威に直面したことはない」とアキリーノ司令官は危機感を募らせる。 トランプ前政権で戦略・戦力開発担当国防副次官補を務めたエルブリッジ・コルビー氏は米ダートマス大学で「中国が戦争の準備をしているのは経験的に事実と思う。今後数年のうちに多面的な戦争や第3次大戦が起こる恐れがあるが、われわれはそれに備えていない」と講演した。 コルビー氏は第2次トランプ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官に抜擢される可能性が取り沙汰されている。 「地政学的リアリストの視点から見れば、中国は台頭する大国として許容できるコストとリスクの範囲内でより大きな影響力と覇権を得ようとする自然な動機がある」 「中国の経済力は驚異的で、われわれができることとは桁違いだ。宝くじに賭けるより、主要な競争相手に最も重要な舞台で壊滅的な敗北を喫するのを防ぐ準備をした方がいい。世界から撤退することはできない。米国が撤退すれば、中国がアジアを支配することになる」(コルビー氏)