朝ドラ『虎に翼』脚本・吉田恵里香さん「育児中の今、あえて諦めていること」とは?|VERY
2024年度前期連続テレビ小説『虎に翼(NHK)』の脚本を担当する吉田恵里香さん。一昨年には 『恋せぬふたり(NHK)』で向田邦子賞、ギャラクシー賞を受賞するなど、常に注目を集める人気脚本家であり、プライベートでは3歳の男の子の母でもあります。多忙な日常生活は「思うようにはいかない」と話す吉田さんに脚本家の仕事や育児について伺いました。
書き続ける上での「不安」はいつだってある
──吉田さんの作品を見ると、小さな心情描写一つにもドキッとさせられます。時代性を捉えた恋愛の仕草や表現はどのように更新されていますか? 自分の中でも模索していることだったので、作品を見てそのように感じてもらえているならうれしいです。今は“胸キュン”という言葉自体に嫌悪感を抱く人もいると聞きます。その一方、ドラマを見る上では“俺様”的な強引な愛情表現からしか得られない養分のようなものがあることも無視できません。以前だったら気軽に飲みに行って、そこで出る話題や街の空気感を知ることも仕事の役に立っていたけれど、子育てをしている今はそう簡単には出かけられません。吉田の書くものは古いと言われないか、5年後10年後に仕事はあるのか。正直今も書き続けながら不安は常にあります。 ──その不安を拭うために意識していることはありますか? 自分が書きたいものや書いていて楽しいことを書きつづけるしかないと思っています。 私の場合はじっくり1本の作品だけに時間を費やすよりも、同時に数本の作品に向き合う方が作品との距離感がうまくつかめるんです。また、仕事として自分や家族のためにもちゃんと「稼がなきゃ」という思いもあります。自分の書きたいものを書くというだけでなく“職業としての作家”という部分も大事にしたい。 今後書きたいことを書き続けるために、たくさんの作品を書く。そうすれば私の信条とは異なるけれど生活のために無理に仕事を受けなければと迷う前にちゃんとNOを言えます。常に同時並行で仕事をするのは本当に書きたいものを書くための種まきでもあるんです。