DXは困りごとが起きたらすぐ着手 アナテック・ヤナコ7代目が準備していた業務フロー図
2社の起業を経て、母親が経営する創業133年の環境計測機器メーカー「アナテック・ヤナコ」(京都市)に入社した7代目後継ぎの桺本頌大(やなぎもと・しょうだい)さん。入社当時、タイムレコーダーも決裁書も紙というアナログな業務運営に驚き、そこからITツールを次々導入し、デジタル上で生産管理から決済、意思決定まで完結できるように変革しました。ツール導入は「勢い」と答えながらも、平時から情報収集しておき、社内の困りごとが発生したときにすぐ導入を決めるなどタイミングに細心の注意を払っていました。 【写真特集】事業再建や売上7倍増を実現 DXに成功した中小企業を紹介
アナテック・ヤナコ、ルーツは1892年創業
アナテック・ヤナコは1892年創業の板ガラスやランプなどのガラス類の販売を手掛ける柳本商店から始まります。柳本製作所への社名変更を経て、環境計測部門が1985年にアナテック・ヤナコとして独立。 その後、環境計測機器メーカーとして、水質計測機器や大気・ガス計測機器、研究所用機器を開発・製造してきました。
デジタルからほど遠かった入社当時
桺本さんは法政大学卒業後、企業向けソフトウェアなどを開発しているメーカーに入社し、エンジニアとして開発業務に携わっていました。その後、2社の起業を経て、京都大学MBAに在学中に母が経営する「アナテック・ヤナコ」に入社しました。 入社当時、タイムレコーダーは紙。受発注はFAXのやり取りで机の上は大量の紙が積みあがっていました。決裁書類も紙だったため、役職者全員が確認してハンコを押すまでに、2週間以上かかったこともありました。「これは早急に取り組まねば」と覚悟を決めました。 そこから桺本さんは数年かけてITツールを導入し、デジタル上で意思決定ができる仕組みを整えていきます。
生産管理も他部門への依頼もすべてデジタル
2024年冬時点の会社で使っているツールは全部で14個。 Microsoft 365 Lark RecoRu Zoom バクラク経費精算 バクラク請求書受取 バクラク請求書発行 Notion STUDIO ミツカリ XServer Bカート Shachihata Cloud QUALiTY SUITEWindows Defender かつて生産管理に使っていたホワイトボードは廃止。いまでは、導入ツールの一つ、Lark上のデータが様々な業務に紐づいており、誰がいつどこに何を出荷すればよいかが可視化され、データに基づいた経営判断ができるようになりました。 このほか、カレンダー上の予定を確認すれば会議の議事録も確認できます。社外の販売会社とのやりとりもチャットで済ませます。 当初は毎月のように新しいツールを導入していたといいます。社員はついてこられたのでしょうか。その問いに返ってきた答えは「勢いです」。 社員にツール導入を相談すると、起こる確率が1%程度の懸念点で導入をためらう声も出てしまうため、あえて事前相談せずに導入を決めたといいます。ただ、業務全体を見渡しながらほかの業務に差しさわりが出ないかどうかや、最初から完璧を求めるのではなく、運用しながら100%に近づけようと考えたといいます。 とはいえ、本業に影響してしまうと困るので、最初は勤怠管理や労務管理など周辺領域から始め、徐々に慣れてもらうことを心掛けました。 逆に途中でやめたツールもあります。 メモやタスク管理、データベース作成など様々な機能を一つにまとめたNotionは「概念が新しすぎてみんなが使いこなせませんでした」。だからこそ、ツールを選ぶ時はこれまでの業務や普段の生活で使っているLINEやエクセル、Webの入力フォームなどに似たデザインのものを選ぶようにしています。 「もしかすると、裏ではいろいろ言われていたかもしれませんが」と笑いつつも、社員たちからは表立って大きな反対はなかったといいます。詳しく聞いていくと、桺本さんならでは工夫がありました。