DXは困りごとが起きたらすぐ着手 アナテック・ヤナコ7代目が準備していた業務フロー図
業務フローチャートで会社全体の業務を把握
新しいツールを導入して業務に影響しないかどうかを事前に判断するには、業務に精通している必要があります。しかし、途中入社で現場経験のない桺本さんには簡単なことではありません。 だからこそ、入社当時、いろんな部門を回っては業務の流れを聞いて、すべて業務フローチャートに落としていきました。 「社内には、特定の仕事に詳しい熟練者はいても、会社の業務全体を把握できているのは私しかいませんでした。そのため、業務フローチャートをつくることで対等に話すことができるようになりました。さらに、問題が起きたときにどこを改善すればよいか、みんなと同じ共通の土台で話せるようにもなりました」 この業務フローチャートは、ツールを導入するときにも、ある部門の課題を解決できてもほかの部門にマイナスが生じないかを確認するのにも役立ちました。
困りごとが出たら「熱いうちに打て」
もう一つは社内で困りごとが出たら「熱いうちに打て」です。他部門への依頼をデジタル化したのも、試薬作成依頼や集荷依頼などで「お願いされていたのに忘れていた」といった問題が起きているときでした。 そんなとき、桺本さんは、Lark上で申請依頼できるアプリを1、2日で作り、会社全体に導入しました。フォームに依頼内容を登録すると、担当者のチャットに通知が飛ぶようにし、見落とし防止にも注意を払っています。 「困りごとが起きているときこそ、みんなが変えたいと仕組みを思っているときなので課題が出た瞬間にすぐ準備すると理解も得やすいのです」 ただし、すぐに作れるようにするためには、日ごろからの情報収集が欠かせません。 「新しいツールが出たら、とりあえずすべての機能を触り、プロパティを見て、どんな問題ならこのツールが役立つだろう、と考えるようにしています」
スムーズに導入できたのは後継ぎだからこそ
スムーズにITツールを導入できた要因として「もし、私が情報システム部門の一社員だったら、ツール一つを導入するのにも、すべての部署に説明に行き、承認をもらう必要があったでしょう。でも後継ぎであるからこそ、動きやすいし、組織を変えやすいという強みがありました」と話す桺本さん。 最近ではこれまでの実績もあり、新しいツールを導入しようとしても「まあ、大丈夫でしょう」という信頼感を得られるようになってきたといいます。 「トップに立つ人間が必ずしもITツールに精通していなくてもよいのですが、強力なリーダーシップは必要だというのが私の意見です」
杉本崇