パリの地で活躍する日本人シェフ 創造の極地を目指す「オルタンシア」
美食の街パリを支えるのは、ビストロからガストロノミーレストランまで様々な舞台で創造に心を砕く料理人たち。持続可能な食の未来を考え、素材と対峙する。 【画像】スペシャリテ“牛肉のタルタル”。出汁の香りとバルサミコが味わいを支える。ジャガイモのムース、キャビアをのせて。 ゲストの顔がほころび会話も弾むような、美食の食卓へと出かけよう。パリで注目のシェフ&レストランを6回に渡りご紹介。
あの名店の跡を引き継ぐ日本人シェフの華麗な世界
◆Ōrtensia(オルタンシア) 世界にその名を轟かせた3ツ星レストラン「アストランス」。移転したその跡地を引き継いだのが、齊藤照允シェフだ。 齊藤さんはフランスで自分の店をオープンするなら、名前は「オルタンシア(紫陽花)」と決めていたという。 その原種となるガクアジサイは日本に自生し、18世紀に西洋に渡り“東洋のバラ”と愛され、各地に根付いた……そんな逸話に、自らの人生の未来を重ね合わせた。 墨色の壁でモダンな印象だった以前の店とは一変して、このたび改装された店内は、ピンクベージュを基調にした優美な雰囲気。しかもインテリアを手がけたのは、なんと齊藤さん自身。 料理の世界に入る前、見識を広げるためにインテリア関係の事務所に勤めたといい、その経験を生かし、内装から皿選び、サイドテーブルのデザインまで自ら手がける。 そんなシェフが創り上げる料理の美しさには、隅々までこだわりを感じる。たとえばスペシャリテの“牛肉のタルタル”。 ほんのりと効かせた鰹節と昆布の出汁の香り。キャビアの塩味、燻製香をかけたジャガイモのムースのコンビネーションは、日仏の美しい融合というほかない。 また“ヴォライユのドディーヌ”は、伝統的な鶏肉のファルシだが、フォアグラとコロナータのラルド、椎茸を詰め、モダンな味わいに昇華させた。 シェフソムリエのロマン・シモンさんが料理とともに勧めるワインのセレクションも絶妙だ。自身で足を運んで探し当てたものばかり。料理とワインが奏でるストーリーにも心を傾けたい。 Terumitsu SAITO(齊藤照允) 1976年生まれ。「ブノワ 東京」勤務後、2007年に渡仏。名店「ル・グラン・ヴェフール」などの厨房を経験し、「ブルー・ヴァレンタイン」でシェフに。2019年「ピルグリム」にて1ツ星を獲得。2022年独立して「オルタンシア」をオープン。 Ōrtensia(オルタンシア) 所在地 4 rue Beethoven 75016 Paris 営業時間 12:30~13:00入店、19:30~20:30入店 定休日 日・月曜、火曜のランチ ※予約はウェブサイトからのみ
乗松美奈子