能登半島地震でも大活躍! 空飛ぶ災害対応「航空レーザー測量」をご存じか
仕組みとメリット
航空レーザー測量装置は、次の三つの技術で構成されている。 ・レーザー測距儀 ・GNSS受信機 ・IMU 「レーザー測距儀」は、多数のレーザー光を照射し、地表からの反射と帰還の時間差を測定することで距離を求める装置である。「GNSS受信機」は、GNSS衛星から常時受信・記録・配信される「電子基準点」データを利用し、航空機の位置を高精度に測定するための装置である。「IMU」は、航空機の姿勢と加速度を測定できる装置である。これらの測定値により、レーザー光の発射方向を正しく補正することができる。 レーザー光はその名のとおり「光」であるため、例えば森の上空から地上に向けて発射すると、木漏れ日のように地上に届く。レーザー測距儀に跳ね返って地上に到達したレーザー光を解析することで、森に覆われた山間部でも地形図を作成することができる。 また、航空写真は日中しか撮影できず、対象物が影にならない時間帯に撮影しなければならないが、航空レーザー測量は航空機と地表面との距離を測定するため、写真と違って測定時間帯の制約が少ないというメリットもある。
災害対策の縁の下の力持ち
航空レーザー技術が確立されるまで、地形図は航空写真を立体的に見る「写真測量」という方法で作られていた。「視力がよくなる」などとうたった3D絵本が売られているが、立体視も同じ原理である。 ある程度の慣れが必要なことに加え、元データが写真であるため、樹木などで地表面が隠れている場合は、技術者が推定して等高線を引く必要があった。 こうしたなか、航空レーザー測量が普及してから、地形計測の精度は飛躍的に向上した。レーザー光は水に吸収されるため、積雪時の計測には補正が必要だが、現地の状況を効率的に把握する有効な手段であることに変わりはない。 航空レーザー測量は、これまでも災害現場でも活用されてきた。東日本大震災では、地震の前後で地形図を作成し、標高ごとに色分けして地盤沈下の影響を調べる資料を作成した。また、解析データは、各自治体や大学などの研究機関で津波シミュレーションや浸水リスクマップに活用されている。 課題は膨大なコストがかかることだが、近年はドローンに搭載できる小型のレーザー機も開発され、計測は身近なものになりつつある。もちろん、災害が起こらないことが一番だ。災害対策の縁の下の力持ちである航空レーザー技術に、もっと注目が集まることを期待したい。
もりあやこ(調査測量系ライター)