【高校野球】磐田西 三ケ日みかんパワーで勝つ…全国高校野球選手権静岡県大会7月6日初戦~話題校紹介
磐田西が“三ケ日みかんパワー”で、春夏を通じて初の甲子園切符をもぎ取る。同校は昨年からオフ期間にみかん農家でアルバイトに従事。労働を通じて周りへ感謝の気持ちが高まったナインが奮起を誓った。 磐田西の選手たちは昨年12月、日本有数のみかん産地である浜松市北区三ケ日町で収穫や運搬、選定などの業務を5日間行った。2、3年の部員31人が参加。5つの農園に分かれ、おおよそ午前7時から午後4時半まで働いた。時給は1000円ほど。昨オフは約89万円の収入となり、ブルペンの屋根修繕、新基準バットの購入費などに充てられた。 「藤山みかん園」から指名を受けて2年連続で働いた河合飛羽三塁手(3年)は、同園の藤山秀男さんと野球談義で仲良くなり「かーくん」の愛称で親しまれた。藤山さんが部を訪れて、差し入れするたびに存在を気にかけてくれる。「『個人スポンサー』は言い過ぎかもしれませんが支えになります」と照れ笑いした。代打の切り札として、夏に雄姿を見せることを誓った。 主将の鈴木淳矢投手(3年)は25人が派遣された「陽だまりファーム」で働いた。「1本の木から収穫する際、みんなが役割分担の判断を各自で行っていた」と振り返った。チームでは普段から自主性を育む方針が取られているが、磨きをかける契機になった。5月にはみかんキャンディーの差し入れがあり、チーム全員が応援を受け止めていた。 この取り組みを始めた山口遼太監督(35)は「学外の人との交流機会として、日頃関わることがない農業に携わってほしいと思った。磐田西は商業系の学科もある。お金に対しての価値をきちんと知ってほしい」と狙いを明かした。「時給1000円は悪くない方だけど、この働きが硬式球1個分の値段。道具に対する意識が変わりました」と河合。「親が(野球関連の費用で)自分にお金を出してくれているありがたみをさらに感じました」と、周囲に支えられての部活動を実感していた。 春は県予選で敗退した。夏に向け、敗因となった守備面の練習時間を増やした。過去最高成績は2005年などの県16強。みかん農家の方々への気持ちも胸に秘め、部のスローガン「下克上」で初の甲子園切符をつかむ。 (伊藤 明日香)
報知新聞社