トランプ氏返り咲き、孫正義氏は〝再訪〟するか 前回は5・7兆円投資、雇用創出を約束
米大統領選で勝利した共和党のトランプ前大統領。1期目就任直前の2016年12月、ソフトバンクグループの孫正義社長(現会長兼社長)がトランプ氏を電撃訪問し、米国への巨額投資を約束したことを明かし、世界中を驚かせた。トランプ氏は大統領選でAI(人工知能)の開発促進を訴えていただけに、AIに並々ならぬ情熱を傾ける孫氏が再びニューヨークのトランプ・タワーを訪れるのか、注目される。 孫氏が1期目直前のトランプ氏を訪問したのは、米国屈指の富豪で共和党の熱烈な支持者だったシェルドン・アデルソン氏からの誘いだった。30代の孫氏が8億ドルで買収した世界最大のコンピューター展示会のコムデックスのトップがアデルソン氏だった。アデルソン氏は孫氏が支払った8億ドルを元手に世界各地にカジノリゾートを建設し、カジノ王に登り詰めていた。 トランプ・タワーから登場した孫氏に戸惑う報道陣に、トランプ氏は「マサはすばらしい男だ」と親しげに語り掛けた。会談は約45分ほどだったが、孫氏は米国への500億ドル(当時のレートで約5兆7000億円)の投資と5万人の雇用創出を約束。孫氏はその後、米国のスタートアップ(新興企業)などに投資を重ね、約束を果たした。 トランプ氏はAIの技術開発に関する大規模な計画を立案中と報じられている。バイデン政権による規制を見直し、安全保障や経済政策など、幅広く活用する積極姿勢をみせている。 IT業界に寛容な態度を示すようになったトランプ氏に対し、アップルのティム・クックCEOが面会。グーグルやアマゾン・コム、メタ(旧フェイスブック)も距離を縮めている。 一方、孫氏はAIの進化によって、人間の1万倍の知性を持つ人工超知能(ASI)が登場すると予測し、AIへの投資を加速させている。10月29日に登壇したサウジアラビアの投資会議では「次の大きな一手に向けて数百億ドル(数兆円)」を準備していると語っている。(高木克聡)