廃墟への立ち入りにYouTuberが「刑事か民事か選んで」…本当に罪に問われる侵入の“境界線”とは?
京都府の「笠置観光ホテル」跡地に立ち入った若者から現金を脅し取ったなどとして、京都府警木津署は2023年12月19日、大阪府在住の男女3人を恐喝などの疑いで逮捕した。その後3人は、1月12日付で不起訴処分となった。 落書きや破壊が行われていた廃墟内部 逮捕された3人は「心霊系YouTuber」として活動しており、ホテルの所有者から管理および不法侵入に対する損害賠償請求に関する委託を受けていたとされる。 恐喝の舞台となった笠置観光ホテルは有名な心霊スポットであり、以前より一般人の不法侵入が後を絶たなかったという。YouTuberらは侵入者に対し「前科がつく」「刑事か民事か選んで」などと恐喝を繰り返し、今までで計34人が被害に遭ったと一部報道で明らかになった。 一方で、今回の恐喝を受けた被害者らも、不法侵入の罪に問われる可能性が出てきている。 こうした廃墟への侵入トラブルは今に始まったことではない。近年ではコスプレイヤーとカメラマンが「映える」と評判の廃墟にて無断で撮影し、SNSで炎上する事案もあった。 廃墟や心霊スポットへの不法侵入には、どのような法的リスクが降りかかるのか。刑事事件に多く対応する杉山大介弁護士に話を聞いた。
どこからが“私有地”なのか
一般的に「不法侵入」と呼ばれる行為は、法律上は①「住居侵入罪」②「邸宅侵入罪」③「建造物侵入罪」のいずれかにあたる。それぞれ、①人が日常生活を送る住居への侵入、②空き家などの日常生活に使用しない住居への侵入、③住居や邸宅以外の建物への侵入、という違いがある。 事件発生前の笠置観光ホテルは、道が封鎖されておらず、公道と私有地の境目が分からなくなっていた。建物の入り口を塞いでいた鉄板もなぎ倒されており、侵入は容易だったと推測できる。このようなケースでは、どこからが不法侵入と認められるのだろうか。 この“どこからが私有地か”という問題。侵入罪では、フェンスや塀で囲まれた建物の“外周”である「囲繞地(いにょうち)」と呼ばれる部分も、邸宅や建造物に含まれると考えられている。しかし、「この囲繞地の限界については、実務家でも判断に悩む」と杉山弁護士は話す。どういうことか。 「たとえば、塀で囲まれていれば、そこが侵入してはいけない建物の一部だとわかると思いますが、3方向がフェンスに囲まれ1方はフェンスが存在しない駐車場への立ち入りについて、裁判所が『囲繞地への侵入』と判断したケースもあります。容易に立ち入れる場所なら侵入にあたらないかというと、決してそうではありません」 では、恐喝の被害者側が不法侵入と見なされた場合、今後どのような刑事処罰と民事上の責任が待っているのだろうか。 「建造物侵入罪は3年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。罰金刑の幅が狭いので、懲役に至ることが多いです。民事では賠償請求が発生するでしょうが、賠償金額は少ないと思われます」(杉山弁護士)