“未来”へ繋がるWRCラリージャパン2023、豊田スタジアムでのステージ開催で「子どもたちがクルマに興味を持ってくれた」
今年も愛知県・岐阜県を舞台に世界最高峰のラリーカーが駆け抜けた。今年の世界ラリー選手権(WRC)ラリージャパンは、昨年大会とは異なり、豊田スタジアムにスーパーSSを設けるというステージ設定になった。 【ギャラリー】見慣れた日常が非日常に変わる。WRCラリージャパン2023 ラリージャパン大会事務局の中神泰次事務局長は、観戦チャンスが大きく増えたことで、将来的なラリー、ひいてはモータースポーツを支える子どもたちが「クルマに興味を持ってくれた」という意見が得られたと語った。 12年ぶりの開催となった昨年のラリージャパンでは、豊田スタジアムにサービスパークを設けたものの、実際にラリーカーがステージを走る姿を見ることができるのは本格的な林道SSのみ。キャパシティの少なさからチケットがすぐに完売してしまった。 今年のラリージャパン開催に向けて、大会事務局はコアなファンだけでなく“ライト層”にもラリーを知ってほしいという想いから、 多額の資金を投じて豊田スタジアムに大掛かりな特設コースを作り上げた。 「今回、豊田スタジアムのスーパーSSを設定した背景には、昨年のラリージャパンの際にチケットがすぐに完売してしまったという事態がありました」 中神事務局長はそう振り返る。 「日本の事情からすると、山のSSだけでは十分なチケット数を発行することができず、皆様に行き渡らなかったという反省がありました」 「ラリーはまだまだマイナーなスポーツです。今年はより多くの方に見ていただきたい、ラリーを観たことがない人にも観に来てほしいという想いから豊田スタジアムでのスーパーSSを設定させていただきました」 「そして単純にスーパーSSを実施するのではなく、スタジアム周辺で様々なイベントを実施する工夫をしました。ラリーに全く興味のないお子さんでも普通のお祭りのような感覚で楽しめて、ラリーに触れていただくという仕掛けもしながら、ラリーを広めていきたいと考えていました」 今年、豊田スタジアムではスーパーSSがDAY1、DAY2、DAY3にそれぞれ1回ずつ設定された他、セレモニアルスタートとセレモニアルフィニッシュが行なわれた。特にDAY3の豊田スタジアムでのスーパーSSは土曜日ということもあり、多くの観客が詰めかけた。 その中には子ども連れも多く見受けられ、ラリーカーの走行を食い入るように観たり、ラリーについて両親に質問を投げかけたりする子どもの様子もあった。 「実際、スタンドには多くの小さなお子さんがいたと思います。友人からも『子どもが楽しんでくれて、ラリーやクルマに興味を持った』というご意見をいただきました」 中神事務局長はそう続ける。 「マイナースポーツだったラグビーのワールドカップ日本開催と少し似ているところがありました。世界レベルの戦いを生で観るというのは非常に説得力があります。ラグビーの時は“にわかファン”という言い方がありましたが、初めて観に来た方がラグビーを好きになったと思います」 「ラリーもそれと同じだと思います。お子さんをはじめ多くの方にラリーに対して関心を持っていただき、また来年も来たいとなるよう、今後とも豊田市を中心にモータースポーツを盛り上げていきたいと考えています」 昨年の課題を解決できたと考える一方で、今年見えてきた課題もあったと中神事務局長は言う。 今年のラリージャパンは、沿道応援を含め4日間合計で延べ53万6800人の観客を集めたとされているものの、平日開催となったDAY1とDAY2では豊田スタジアムへの来場者数が伸び悩んだ。 豊田スタジアムの4日間それぞれの観客動員数は、DAY1の16日(木)で1万6100人、DAY2の17日(金)で1万6500人、DAY3の18日(土)で2万8000人、19日(日)が7000人となった。 「昨年の大きな課題は安全面でした。今年についてはボランティアの数をかなり増やし、安全対策を充実しました。また、昨年は多くの方にラリーを楽しんでもらうことができなかったという課題があったので、豊田スタジアムでのスーパーSSという形で解決しました」と中神事務局長は言う。 「今年の新たな課題としましては、やはり人数です」 「豊田スタジアムのキャパシティは4万3000人です。ラリージャパンでは照明や見切り席などを考慮して、最大3万5000人で販売させていただきましたが、その数字に及ばなかったというのが課題だと考えています」 「プロモーションやライト層の掘り下げをもっと実施する必要があります。テレビ局や新聞各社、メディアにも取り上げていただいて、ラリージャパンというものがある程度知れ渡ったと思いますが、来年より多くの方に来ていただけるように、1年間努力したいと思います」 既に来季のラリージャパンの日程は発表されている。2024年11月21日(木)から24日(日)にかけて、再び世界最高峰のラリーが日本に帰ってくる。
滑川 寛