「静岡ブライダル事情」様変わり 神前式が人気、指輪の予算控えめ
静岡県内の結婚式場や宝飾品店に対するカップルの注文が、新型コロナウイルス禍を経て様変わりしている。価値観の多様化に伴って伝統的な神前挙式の希望が増えたほか、物価高を受けてシンプルな指輪の人気が上がるなど予算を抑える動きもみられる。各事業者は移ろうニーズに寄り添った商品・サービスを提案し、顧客満足度の向上を図る。 ホテルアソシア静岡(静岡市葵区)では、挙式数全体に占める神前式の割合がコロナ前の19年比で約1割増えた。家族や親族のみで行う小規模が主流となり、家同士を結びつける古来の風習が見直されたことが背景にあると分析する。 同ホテルは4月、放置竹林を伐採して地域資源として活用する地元グループ「アカリノワ」の協力を得て、神殿に竹あかりを設置。幻想的で華やかな雰囲気を高めた。SNSで話題を呼び、静岡県外からも問い合わせが相次ぐ。担当者は「式を挙げない選択が増える中、式場の魅力引き上げは大切。静岡で愛を誓い合うにふさわしい演出をしていく」と語る。 浜松市中央区の式場「ジ・オリエンタルテラス」でも、挙式数は19年比で9割まで回復したが、式の規模は3割減の50人程度が主流に。賃金の伸びが物価高に及ばない状況が続く中で見積もりの内容を吟味する顧客も増え、「割引を条件に即決を打診しても通用しなくなった」(担当者)。 そこで婚礼料理の打ち合わせに料理長を同席させて充実させたいメニューを聞き取ったり、併設レストランを生かした記念日の対応をアピールしたりするなどし、顧客が価格面の判断でより納得感が得られるよう工夫している。 費用面でのシビアさは関連用品にも広がる。指輪を扱うキタガワブライダル(静岡市葵区)では客数が回復する一方、購入額は減少傾向にある。婚約指輪の中心価格帯は25万~30万円だが、昨春からは10万~20万円弱の品も注目され、指輪の支払いを抑えて新婚旅行に予算を回す意向も目立っているという。 ただ担当者は「価格が多少高くても、気に入った品への支払いには前向きな若者も一定数いる」と指摘。柔らかな素材の純金や純プラチナ製ながら、長く愛用するために必要な強度も備えた指輪の投入を検討するなど訴求力に磨きをかけている。 式数と売上高 コロナ禍前に及ばず 経済産業省の特定サービス産業動態統計調査によると、国内結婚式場の2023年取扱件数は7万22件。20年の約1・9倍となったが、19年(8万6304件)に及ばなかった。23年売上高は2346億1700万円。20年の約2・1倍、19年の約9割だった。担当者は「式を盛大に挙げるのが従来の傾向だったが、コロナの影響に加え、価値観の多様化で、費用を絞る動きが見られる」と語る。
静岡新聞社