富士山女子駅伝での「大ブレーキ」から復活 城西大学エース・高橋葵、周囲の助けを借りて関東インカレ女子10000mで2位に
5月9日に開催された第103回関東学生陸上競技対校選手権(関東インカレ)の女子1部10000mで、城西大学の高橋葵(3年、日体大柏)が日本選手トップとなる全体2位に入った。直前までベストコンディションではなかったそうだが、本番での強さを見せつける形となった。 【写真】不破聖衣来が積極的に集団を引っ張る形になると、高橋葵もそれに続いた
素直な気持ちが出たガッツポーズ
レースは1周目から大東文化大学のサラ・ワンジル(2年、帝京長岡)が抜け出し、後方に日本選手の集団が形成される形となった。高橋はチームメートの金子陽向(3年、川崎市立橘)や白木ひなの(2年、山田)とともに「1km3分20秒ぐらいのペースで引っ張り合いながら、絶対に3人で8位以内に入賞しよう」と決意して臨んだ。 1000mを過ぎたあたりから第2集団は10人ほどとなり、高橋は集団の最後方につけた。すぐ後ろには日本学生記録を持つ不破聖衣来(4年、健大高崎)がいた。4000m付近、不破が第2集団の先頭に立つと、高橋も引っ張られるように続いた。 レースが大きく動いたのは8000mの手前。日本体育大学の嶋田桃子(4年、九州国際大付)が、バックストレートから外を回ってスパート。高橋もそこについていった。「迷ったんですけど、関東インカレという舞台は順位争いなので、少しでも前に行く人がいれば、自分も食らいつこうと思っていました。自分の信念みたいなものです」。残り1000mとなったところで嶋田を振り切って前へ。最後の力を振り絞り、右手で作ったVサインを突き上げながらゴールした。 「自然と『あれ、自分2位? うれしい!』みたいな素直な気持ちが出ました」
「葵は本番に強いんだから大丈夫」
高橋はレース後、この関東インカレが今シーズンの初戦だったことを明かした。「練習メニューの消化状況が悪くて、全然ベストコンディションとは言えなかったんです。でも『このレースで何かを得よう』という気持ちで走り出しました」。後方から様子をうかがいながらの8位入賞が目標だった。 前回のレースは、昨年12月末の全日本大学女子選抜駅伝(富士山女子駅伝)までさかのぼる。7区間の中で最長の10.5kmを走るエース区間の5区を任され、区間17位。チーム順位も3位から6位に後退させてしまった。「大ブレーキしてしまってから、メンタルがボロボロの状態になってしまって……。2024年はレースにも全然出られない状況が続いてしまいました」 けがではなく、自分本来の走りを取り戻せないスランプのようなものだったと振り返る。ポイント練習も予定したメニューをこなせず、1000mを10本の内容で4本しか走れないこともあった。スピードも出ず、体作りもうまくいっていない感覚があった。赤羽周平監督からは「このレースを通して、今の現状を確かめよう」とアドバイスを受けた。おそらく苦しい戦いになるから、今回をきっかけに、次に向けて気持ちを奮い立たせよう、という狙いがあったのだろうと高橋は推察する。仲間からは「葵は本番に強いんだから大丈夫。ここまでずっと頑張ってきたんだから、気持ちをリラックスさせて一緒に頑張ろう」と背中を押された。「それがすごく心強かったです」と高橋は周囲から受けた支えに感謝の言葉を惜しまない。