日本最後の「電力会社が手がける鉄道」きょう廃線
日本最後の「電力会社が手がける鉄道」きょう廃線
きょう30日、ひとつの鉄道路線が廃止される。関西の電力供給を支えるために建設されたトンネルを走り、54年間にわたって観光客の足として愛された、関電トンネルトロリーバスだ。廃止を前に現地を訪れてみた。
関電トンネルトロリーバスは、関西電力が運営
今月24日、3連休の中日とあって始発駅の扇沢駅は朝から多くの乗客で混雑していた。ちょうど数日前に、当地としては遅すぎる初冠雪を迎えていたが、その雪は日陰に少し残るだけだ。駅で列車を待つ乗客も、スキーヤーの姿はまばらで、子供連れやカメラを持った鉄道ファンらしき姿が目立つ。 午前10時発の列車に乗り込もうと、乗車列に並んだ。きっぷには「関西電力株式会社」の文字。この関電トンネルトロリーバスは、関西電力が運営しているのだ。かつて明治時代には、鉄道会社が電力事業を営む例が多く見られたが、今はここが日本唯一である。
電車のように架線から取り入れた電気でモーターを回して走る
発車7分前に改札がスタート。3階の乗車ホームへと階段を上がると、目の前に3台のトロリーバスが停まっていた。その頭上には2本の架線が張られ、バスの天井から延びたポールが接触している。 トロリーバスは、通常のバスのように軽油を使ったエンジンで走るのではなく、電車のように架線から取り入れた電気でモーターを回して走る。 正式には「無軌条電車」、つまりレール(軌条)がない電車と呼び、いわば路面電車の一種だ。トロリーバス自体も、昭和30年代には全国各地で見られたが、現在はこの関電トンネルトロリーバスを含め、2ヶ所に残るのみである。
トンネル内の換気ができず排気ガス出ないトロリーバス方式を採用
午前10時ちょうど、駅長が先頭のバスに向かって大きく手を上げた。まるで電車のような加速音をあげながら出発。大きく右へカーブしながら山を登ると、すぐにトンネルへと入った。 この関電トンネルは、黒部ダムや黒部川第四発電所(黒四)を建設するために掘られたもので、その完成後は立山黒部アルペンルートの一部として観光客に利用されることになった。 その際、トンネル内の換気ができないこと、また国立公園内にあることから、排気ガスの出ないトロリーバス方式を採用。現在走っている車両は3代目となる300形で、1993年から25年間にわたって活躍してきた。