【漫画家に聞く】大好きな刺繍を禁止されたアンドロイド、その行く末はーー近未来を想像させるSNS漫画が切ない
AIが急速に社会に浸透しているなかで、「自律的に思考するアンドロイド」という存在にもリアリティが生まれている。11月下旬、Xに投稿された『大好きな刺繍を禁止されたアンドロイドが壊れていくお話』(アンドロイドの夢)を読むと、自由が許されないアンドロイド・ネリの姿に、「近い将来、こういう切ない出来事が起こるのだろうか」と想像させられる。 近未来を想像させる切なすぎる漫画『アンドロイドの夢』 作者のポポさん(@ikkaku_mute)は、同人誌即売会『コミティア』への出展をメインに活動していたが、今後はSNSへの作品投稿や出版社への持ち込みも積極的に行いたいと話す。漫画家として歩みを進めるポポさんに、本作について話を聞いた。(望月悠木) ■当初はもっと切ないエンディングだった? ――『アンドロイドの夢』を制作した経緯を教えてください。 ポポ:私はかなり年齢を重ねてから自分のやりたいことを素直に楽しむことの大切さに気づきました。「自分の好きなことを楽しむことができる幸せを物語に入れて描きたい」と思い、描き始めたのがキッカケです。 ――完成までの期間はどれくらいですか? ポポ:当時ある出版社の編集者さんから「読み切り掲載を目指してみましょう」と声をかけてもらい、描き始めた作品でもあります。その編集者さんが締め切りを設定してくれたおかげで2週間でネームを作ることができました。残念ながら掲載には至らなかったのですが、その後1ヶ月半ほどで作画を仕上げて完成させました。 ――“アンドロイドと刺繍”という組み合わせは斬新でしたね。 ポポ:もともとロボットや小さいものたちの物語を描くのが好きでした。また、当時刺繍が好きだったため、それらを合わせた感じです。そして「アンドロイドが自由に生きられない社会で自分の好きなことをやり通す物語を描けたら」と思って制作に取りかかりました。 ――ストーリー構成で意識したことは? ポポ:本作はあまり構成などを考えずにすらっと描いてしまいました。今見返すと「もう少しアンドロイドに感情移入できるよう、アンドロイドが自由に生きられない状況を具体的に描くことができたら良かったかな」と思っています。また、ラストは当初もう少し悲しい結末にする予定でしたが、編集者さんに「少し救いがあったほうが良い」というアドバイスを受け、刺繍を仕上げてアンドロイドの夢を叶える展開にしました。「救いのある最後にして良かった」と自分でも思います。当時の編集者さんに感謝しています。 ――ネリとアライグマはどのように作り上げたのですか? ポポ:あまり試行錯誤せずに頭に浮かんだ姿をそのまま描きました。明確にモデルはいないのですが、これまで見てきた漫画やアニメ、ゲームなどの影響は受けているかもしれません。 ――そもそも、なぜネリの友達としてアライグマを選んだのですか? ポポ:なぜアライグマを選んだのかは私も全くわかりません。「ネリの相方は動物がいいな」と思っていたのと、過去に狐や狸が出てくる漫画をずっと描いていたので「次はアライグマかな」と思ったことが大きいかもしれません。 ――ちなみにアライグマはかなりフランクな口調でした。 ポポ:アライグマは“ネリにとって外の世界の先輩のような存在”にしたかったので、このような口調になりました。 ――最後にこれからの漫画制作における展望は? ポポ:これまではSNSで漫画を発表していくことに重きを置いていて、今後もそれは変わらないと思うのですが、商業への憧れがあるので「どこかで商業漫画が発表できたらいいな」と思っています。商業で発表できるような実力をつけられるように頑張っていきたいです。
望月悠木