絶滅危惧の鳥「ミゾゴイ」、ひと夏で2度の繁殖を確認 房総半島南部(千葉県)
南房総市の交流施設「ヤマナハウス」副代表の沖浩志さん(41)らのチームが、房総半島南部の地域で、鳥のサギの仲間であるミゾゴイが、この夏に幼鳥が巣立ったのと同じ巣で再びひなを育てている様子を確認した。ミゾゴイが1シーズンに同じ巣で子育てをするのが確認される例は珍しい。沖さんは「まさか、一度巣立った巣にひながいるとは思わなかった。貴重な記録。鳥類研究の専門家たちと情報を共有して今後の研究に役立てたい」としている。 今回、ミゾゴイのひなが確認されたのは8月半ば。高さ6メートルほどの樹上に、木の枝を組み合わせて築いた巣で2羽のひなが首を伸ばす姿が見られた。体の大きさなどから、当時で生後20日ぐらいと推測されるという。 ひなは首を伸ばして警戒しており、そのまま観察を続けると、親鳥も警戒して子育てを放棄する可能性があるため、沖さんはカメラで数秒間、ひなの姿を撮影するのにとどめたという。 この巣は、7月初めの調査で見つけた。幼鳥のものとみられるふんが生渇きで、沖さんたちが見つける直前に幼鳥が巣立ったとみられる痕跡があった。 ミゾゴイは、日本で繁殖し、冬になるとフィリピンなど南の暖かい地域に渡るが、数は少ないものの日本国内で越冬する個体もいるという。 多くは5~7月に3~4個の卵を産み、20日~1カ月間でふ化。ひなは1カ月ほどで巣立つ。 沖さんによると、別のつがいのひなの可能性もあるものの1度、幼鳥が巣立った巣で、1シーズンに2度の子育てが確認される例は極めて珍しい。 沖さんは、房総半島南部の他の複数の場所でミゾゴイの生息を確認しており、「このエリアにはとても良好な里山の環境が残っている証しと考えられる」と話す。 同じ巣で同シーズンに複数回、ミゾゴイの繁殖活動を確認したことについて、沖さんは日本野鳥の会や公立の博物館などに情報を提供し、今後のミゾゴイの研究や、房総半島南部の豊かな自然環境の保全に役立てたい考えだ。 一方で沖さんは、今回のような野生生物の新たな生息状況が明らかになると、生態に配慮せずに観察しようとする人が出ることを懸念する。このため、「詳しい情報の取り扱いには十分注意して発信する」としている。 ヤマナハウスは、来年で活動開始から10周年になるのを記念し、5月から沖さんを中心に、地元の高校の生物部や環境を調査する専門会社などと連携して、さまざまな生物の生息状況を調べている。 (斎藤大宙) ◆ ◆ ◆ 「ミゾゴイ」体長50センチほどのサギ科の鳥。標高1000メートル以下の平地から山地にかけての山林に生息。昆虫やサワガニ、陸に生息する貝、ミミズなどを餌にしている。危険を感じると首を上に伸ばして木の枝になりすます習性がある。日本では生息地の開発などで1960年代以降、数が減っていると考えられており、環境省のレッドリストで「絶滅危惧2類」(絶滅の危険が増大している)に分類されている。