中国の特許ただ乗りに韓国が刀抜く…「バッテリー特許戦争」勃発か
電気自動車の需要停滞の長期化で世界的競争がさらに激しくなったバッテリー業界に「特許戦争」の戦雲が漂っている。韓国のバッテリー企業は中国など後発走者が特許の無断使用で海外市場進出を拡大すると知的財産権(IP)を武器にこれを阻止する構想だ。 【写真】LG化学正極材工場着工式が行われた米テネシー州クラークスビル ◇LGエナジーソリューションとCATL、欧州でIP人材採用競争 業界によると、中国を除く世界の車載用電池市場シェア1位と2位のCATLとLGエナジーソリューションは最近ドイツなど欧州で特許管理者や弁理士などIP関連人材を競争的に採用している。両社とも欧州内で特許侵害訴訟とライセンシング(特許使用契約)の活性化に備えるだろうとの見方が出ている。 LGエナジーソリューションは「特許ただ乗り」に強く対応している。現在バッテリー素材、工程、バッテリー管理システム(BMS)技術などの特許を中国企業などが侵害した状況を確保し警告状を送ってライセンス料を交渉中だ。LGエナジーソリューションが保有する特許のうち競合会社が侵害したり侵害したと予想される「戦略特許」は1000件に上り、このうち実際に侵害が確認されたものだけで580件に達する。 LGエナジーソリューションの特許侵害対応はハンガリーの特許管理専門会社チューリップ・イノベーションを通じて行われている。チューリップ・イノベーションは5月にLGエナジーソリューションとパナソニックのリチウムイオンバッテリー技術関連特許を統合した新しいライセンシングプログラムを発売した。韓国と日本が組んで後発走者である中国牽制に出たのだ。LGエナジーソリューション関係者は「優秀な特許を確保しにくい後発企業が特許の無断使用で世界市場進出を拡大しており公正な競争にならないと判断した。特許侵害禁止訴訟など強硬に対応するだろう」と話した。 LGエナジーソリューションは特許侵害企業との交渉に失敗すれば主に欧州で訴訟に出る見通しだ。特許法人亜州のイ・チャンフン弁理士は「昨年発足した欧州統一特許裁判所(UPC)を通じれば加盟国全体に製品販売禁止などが可能で、特許侵害訴訟が効果的な手段になれる」と話した。市場調査会社SNEリサーチによると、中国を除いた世界市場で中国のバッテリー企業のシェアは昨年の35.1%から今年上半期には38.9%まで上がった。 LG化学もやはり中国のバッテリー素材企業と特許訴訟を進行中だ。LG化学は中国の正極材企業容百科技の韓国子会社載世能源が自社の三元系(ニッケル・コバルト・マンガン、NCM)正極材特許を侵害したと主張する。LG化学は昨年末に韓国産業通商資源部貿易委員会に不公正貿易行為調査を申し立て、載世能源は特許無効審判で対抗した。LG化学は8月にソウル中央地裁に特許侵害禁止訴訟を提起した。現在両社は訴訟などで争うとして貿易委員会に調査中止申請をし、委員会は21日に中止可否を判断する。業界関係者は「この訴訟は正極材企業間特許紛争の基準になる重要な訴訟」と話した。 ◇「特許武器に中国の価格競争力下げなくては」 韓国バッテリー業界は三元系技術の特許侵害を防げば中国の海外市場膨張を抑制できると考える。対外経済政策研究院のチェ・ジェヒ専門研究員は「これまで中国が素材供給網を掌握し韓国企業が特許侵害に強力に対応しにくかった。これからは海外市場での競争が激しくなっただけに特許を武器として活用しなければならない」と話す。漢陽(ハニャン)大学エネルギー工学科のソン・ヤングク教授は、「三元系バッテリーはわれわれが守らなければならない最後の砦。価格競争力で中国に勝つのは難しいため、特許交渉で中国企業の競争力を下げてこそ韓国がバッテリー産業を守ることができるだろう」と話した。 特許を活用してバッテリーライセンス市場を育てれば未来の収益確保も可能だ。LGエナジーソリューションは累積特許3万6570件を、サムスンSDIは2万1571件を保有している。これを活用すればロイヤルティーで毎年数兆ウォンの売り上げを得る半導体業界のクアルコムのように、新たな収益源を期待することもできる。