山形屋 グループ負債約360億円 経営再建に向け私的整理へ 鹿児島県
鹿児島放送
創業273年。鹿児島市の老舗百貨店「山形屋」が経営再建のため私的整理の手続きに入っていることが分かりました。 山形屋の当期純利益はコロナ禍に入る前から赤字が続いていて、去年2月期の決算ではおよそ8億円の損失となっています。 山形屋によりますと、グループ17社の有利子負債はあわせておよそ360億円にのぼります。 資金繰りの悪化から去年、メインバンクである鹿児島銀行が中心となり、第三者の関与のもと再建を目指す「事業再生ADR」の手続きに入り、事業再生実務家協会に受理されたということです。 事業再生計画は「グループを再編しホールディングス体制に移行」、「鹿児島銀行などからの出向受け入れ」、「会長・社長のホールディングスからの報酬全額カット」などで、自主再建を目指すとしています。 借入金は110億円を株式化や返済順位の低いローンへの組み換え、残る250億円の返済は5年間猶予するという計画です。 今月28日の債権者会議で決議され、債権者全員が同意すれば成立となります。もし成立しなかった場合は裁判所が関与する法的整理に移行します。 山形屋は創業1772年。法人化したのは1917年でふるさとのデパートとして長年、親しまれています。 ■街の声■ 「物産展などが賑わっているニュースをよく見るし、自分も行ったりするので、あのお客さんの量を見ると、そんなまさかって感じですね」 「昔から鹿児島って言ったら山形屋。賑やかさを取り戻してもらえれば」 「県民が山形屋を応援するように買い物に行ってもらわないと売上が上がってこない」 「若い人が買いに行かないとね」 県内の百貨店では、2009年に三越鹿児島店が経営不振のため閉店しています。 山形屋は「メインバンクである鹿児島銀行としっかり取り組んでまいります。お客様・取引先に影響を及ぼすものではないのでご安心頂きたい」とコメントしています。 今回、山形屋が申請した「事業再生ADR」とは、いったいどのような制度なのでしょうか。 「事業再生ADR」は、裁判所ではない第三者機関が、経営が悪化した企業と資金を貸し付けている金融機関の間を取り持ち、再建策を決めるものです。 経営難に陥った企業が事業の再建を目指す場合、「法的整理」と「私的整理」に分かれますが、「事業再生ADR」は「私的整理」に含まれます。 「私的整理」は「法的整理」より「経営に失敗した」という印象を持たれにくく、柔軟な方法を取れるのが特徴です。 「事業再生ADR」は基本的には「私的整理」に含まれますが、経済産業省が認定した第三者機関が関与することで、私的整理の柔軟性と、法的整理の公平性が両立できるメリットがあるんです。 ただ、注意も必要です。「事業再生ADR」が成立するためのポイントについて、専門家は次のように話しています。 ■事業再生ADRに詳しい たくみ法律事務所の宮田卓弥・弁護士■ 「事業再生ADRでは、金融機関のみになりますけど、全債権者の同意が必要になります。それによって、一部の債権者が不同意になってしまうと法的手続きに移行せざるを得ないというデメリットがあります。金融機関としては、これまでの経営陣の状況で資金繰りが悪化したと見るので、どういう風にして経営陣が入れ替わったり、刷新するのは大きなポイントかと思います」 なお、今年3月までの「事業再生ADR」の申請件数は99件で、このうち70件で事業再生計画案が成立しています。