【ライバル車を比較!】ヤマハ「トレーサー9GT」VS トライアンフ「タイガー900GT プロ」|フロント17インチと19インチでは乗り味が大ちがい(横田和彦編)
3気筒エンジンのバイクだが、キャラはぜんぜん違う!
直列3気筒エンジンは四輪では比較的多いのだが、二輪では近年増えてきたエンジン型式。といっても現在ラインアップしているのはトライアンフとヤマハのみ。巷では「2気筒と4気筒のイイトコ取り」みたいな表現がされている。基本的には間違ってないそうなんだけど、実は直列3気筒の中にも個性がある。それを決めるのが「爆発間隔」だ。 【写真はこちら】「トレーサー9GT」と「タイガー900GTプロ」の走行シーン トレーサー9 GTは3つあるクランクピンを120度ごとに取り付けた一般的な等間隔爆発方式だが、タイガー900 GT プロは90度ずつひねって配置。Tプレーンと呼ばれる不等間隔爆発を採用している。そのためアクセルを開けるとわずかにバラつくような排気音だ。 しかし、走り出すとトルクがなめらかに生み出されることを体感。振動も思ったほどではなく、回転を上げていっても微振動程度だ。パワーの盛り上がり感はなかなかエキサイティングだが、コントロールから逸脱しない手の内感がある。なにより足まわりの動きがしなやかで車体とのマッチングが良い。 荒れた路面であっても挙動が柔らかいので、不安を感じさせない。そしてハンドリングは「オフロードモデルをベースにしたツアラーモデル」ということが明確に伝わってくる安定志向。といってもダルいわけではなく、ライダーの意思どおりに動くので安心感が高い。乗り始めてから短時間でバイクとの信頼関係が構築できるフレンドリーなキャラクターなのだ。 走り出してすぐに「コイツはなかなかパワフルだぞ」と感じさせてくれたのがトレーサー9 GTだ。前傾シリンダーの直列3気筒エンジンは、これまでにもXSR900や同GPなどで体験してきた馴染みがあるもの。初めてじゃないんだけど、乗るたびにハイパワー感に驚かされる。この直列3気筒エンジンはモデルチェンジのたびに低~中回転域での雑味が消えて洗練されてくるイメージなのだが、その分パワフルさが際立ってくる。 等間隔爆発なので振動が少ないかと思いきや、アクセルを大きく開けて回転を一気にグワーッと上げると、それなりにビリビリとくる。パワーに満ち溢れている感じだ。ただしクルージングに入ると荒々しさは影を潜めてスムーズに。さすがはGT(グランツーリスモ)だ。そのとき電子制御サスペンションはコンフォートモードがお薦め。さらにクルーズコントロールを使えば非常に快適な旅ライディングが味わえる。 両車とも旅バイクとしての完成度は高いが、長距離移動という点で見るとタイガー900 GT プロの方が優雅にこなせて好感をもった。しかしボクは出先でワインディグに遭遇すると嬉しくなっちゃう人。そこでの走りがバイクの印象を変えてしまうこともある。 タイガー900 GT プロは先にも言ったように挙動がしなやか。ブレーキングでのノーズダイブが自然で、コーナーリングのキッカケがつかみやすい。19インチのフロントタイヤはライダーが幅広のハンドルに入力することで狙ったラインをトレース。リアタイヤに伝わるトルクを感じながら気持ちよく立ち上がる。終始不安を感じない走りだ。 対して電サスの設定をスポーツモードにしたトレーサー9 GTは、コーナーの進入でフロントブレーキを強めにかけて17インチのフロントタイヤに荷重し、体重移動でクイッとバンクさせる。広すぎないハンドル幅とステップ位置がロードモデルで曲がるときのように体重移動をサポート。 そしてタイガー900 GT プロよりもコンパクトに旋回すると、鋭くパワフルに吹け上がるエンジン特性を活かして、豪快に立ち上がっていく。その一連の流れが実にスポーティでエキサイティングなのだ。「さすが、スポーツバイク由来のツアラーだなぁ」と実感。この感覚はスポーツライディング好きにはたまらない。 ライダーが操っている手応えが得やすいタイガー900 GT プロか、ロードスポーツのようなシャープな挙動のトレーサー9 GTか。ああっ、悩ましい!
横田和彦