2024年注目の コマース トレンド5選:生成AIの活用から人手不足の解消まで 小売ビジネスを成長させる新たなトレンドとは?【後編】
この記事は、小売業界の最前線を伝えるメディア「モダンリテール[日本版]」の記事です。 2024年注目の コマース トレンド5選:生成AIの活用から人手不足の解消まで 小売ビジネスを成長させる新たなトレンドとは?【後編】 本稿では、コマース・リテール領域のスタートアップを支援するVCファンド「New Commerce Ventures」を運営している筆者が、2023年に話題になったスタートアップを振り返るとともに、2024年の注目のトレンドについて、前編に続き探っていきます。 2024年注目の コマース トレンド5選:生成AIの活用から人手不足の解消まで 小売ビジネスを成長させる新たなトレンドとは?【前編】 2024年注目の コマース トレンド5選:生成AIの活用から人手不足の解消まで 小売ビジネスを成長させる新たなトレンドとは?【後編】 ◆ ◆ ◆
3. 深刻化する人手不足に応える「従業員エンパワーメント」
新たな業務効率化ソリューションが生まれてはいるものの、小売店や飲食店における人手不足はまだまだ深刻な課題となっています。特に実店舗では、従来の店舗運営を継続できず、撤退や廃業に追い込まれる店舗も増加しています。地域によっては、店舗の撤退により、近隣で買い物できないという「買い物難民」も生まれています。 このような店舗の人手不足を解消するソリューションも多く誕生しています。たとえば、Amazonのジャスト・ウォークアウト(Just Walk Out)は、入店時に顧客のAmazonIDを取得、コンピュータービジョンを通じて顧客が手に取った商品を特定し、退店時にAmazonIDで自動決済されるレジレス決済システムを提供しています。また、ラダー(RADAR)は、店内や倉庫内の在庫位置情報をリアルタイムで把握できるサービスを提供しています。また国内企業では、ミューズ(MUSE)が、品出し業務を自動化する搬送ロボットを提供しています。 Image via Muse 人手不足に対応するために、こうした店頭業務の自動化・省人化ソリューションとともに成長が期待されるのが、従業員1人あたりの生産性を高める、従業員をエンパワーメントするソリューションです。 従業員エンパワーメントは2種類に分けられ、1つ目は、文字通り1人あたりの生産性を高めるソリューションです。たとえば、店舗スタッフの業務管理アプリ「スタッフスタート(STAFF START)」を運営するバニッシュスタンダードは、販売スタッフが自社サイトやSNSに自社商品を紹介するコンテンツを投稿すると、その投稿を経由して生まれた売上に応じて、販売スタッフが評価される仕組みを開発しました。この仕組みにより、1人の従業員が店舗での接客に加え、インターネット上での販売促進を積極的に行うことができ、生産性が高まるというわけです。 2つ目は、従業員の満足度を高めるソリューションです。労働人口が不足するなかで、離職防止・採用強化は大きな課題となっています。 Image via SparkPlug 海外では、スパークプラグ(SparkPlug)が、小売店や飲食店のスタッフが1人ひとり販売目標を設定し、目標を達成するとインセンティブが得られる仕組みを提供しています。目標達成状況はランキング化され、スタッフが閲覧できるため、スタッフの意欲を引き出す効果も生んでいます。同じくアクシアルシフト(Axial Shift)は、飲食店向けにスタッフそれぞれの売上高、チップ、シフトなどをリアルタイムで閲覧できるサービスを提供しており、ほかのスタッフやほかの店舗の実績を見ながらゲーム感覚で競争することを促しています。 また、ワークスライド(WorkStride)は、スタッフに対して、給与の早期支払いや、目標達成・社内表彰時のインセンティブ提供を管理できる仕組みを提供しています。 このようなインセンティブやゲーミフィケーション以外にも、福利厚生の充実や従業員向けのローン制度・教育制度など、従業員満足度を向上させるソリューションはまだまだ成長する余地があると考えており、2024年も引き続き注目したいと思います。