『海に眠るダイヤモンド』は何を描こうとしているのか? 東京パートでまだ描かれていないものとは?徹底考察&解説
神木隆之介主演の日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)が、22日についに最終回を迎える。昭和の長崎・端島と令和の現代を繋ぐこの壮大な物語は、何を描こうとしているのか? 今回は、来る最終回に備え、改めて本作の魅力を徹底解説する。(文・明日菜子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】いよいよ最終回…結末の鍵を握るのは? 貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『海に眠るダイヤモンド』劇中カット一覧
『海に眠るダイヤモンド』は何を描こうとしているのか?
「人生、変えたくないか?」 『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)がいよいよ最終回を迎える。野木亜紀子が手がける脚本は、毎回どこを切り取っても名場面になり得る素晴らしいシーンの連続だが、ここにきて反芻するのは、鉄平(神木隆之介)が端島を出ていこうとしたリナ(池田エライザ)に投げかけた第1話のセリフだ。 長崎の大学を卒業した後、そのまま島の外で働く選択肢もあったが、地元・端島に戻り、鷹羽鉱業の職員として島を支える道を選んだ。その選択を保守的と捉える人もいるだろう。それでも鉄平は、端島に根を張り、端島で生きる道を選んだ。 だが最終回直前で、夫・進平(斎藤工)が不慮の事故で亡くなり、まだ赤ん坊の誠を抱えるリナと鉄平が、端島を出たことが明らかになった。その展開を予感させるかのように、朝子(杉咲花)への恋心を自覚したキッカケとなったガラス瓶には、いつしか花が飾られなくなっていた。 令和に生きるホスト・玲央(神木隆之介)が読んでいる鉄平の日記の終盤は、リナのことばかりが綴られているという。鉄平の人生は一体どこに向かったのか。
端島に暮らした人々が確かに存在した証
さて、端島に生きた人々の活気ある営みから、令和の現代に生きる人々が抱える虚しさまで、70年にわたる壮大なスケールで紡がれた『海に眠るダイヤモンド』は、いったい何を描こうとした物語なのだろう。 本作は、ひとつのジャンルにとどまらず、さまざまな要素が詰め込まれている。それは現実に生きる私たちが、恋愛や仕事といったカテゴリーだけに収まらないのと同じ。あくまでも鉄平や朝子、百合子(土屋太鳳)や賢将(清水尋也)、リナたちの日々の営みの中に、仕事があり、恋愛がある。 本作にあえてテーマをつけるとしたら、“歴史の語り直し”になるだろう。それは、第1話で玲央に「廃墟じゃない」と悔しそうな声を漏らしたいづみ(宮本信子)や、被曝を経験した百合子が「被爆した人には終わってない!」と放ったセリフにも感じられる。 今は観光スポットとして(言わば)商業化された端島に、暮らしていた人々が確かに存在した証を残そうとしているのではないだろうか。 それはかつての『アンナチュラル』(2018、TBS系)や『MIU404』(2020、TBS系)、さらには映画『ラストマイル』(2024)にも通ずる、野木亜紀子らしい「光のあたらなかった人々を照らす物語」だ。 終わりがあるゆえに美しいのではなく、その場所でしっかりと根を張り、日々を生きた人々がいたからこそ、端島は美しい。実在していた人々をエモーショナルに昇華させないところにも強い意志を感じた。