『海に眠るダイヤモンド』は何を描こうとしているのか? 東京パートでまだ描かれていないものとは?徹底考察&解説
令和を生きる人にとっての「ダイヤモンド」とは
本作でもう1つ気になっているのが、玲央をはじめとした令和に生きる人たちの行く末である。端島とは対照的に令和パートは薄暗い。 たとえば、端島では住民たちの生活が感じられる灯りで豊かさが表れているのに対し、令和のシーンは、ホストクラブの人工的なシャンデリアが映し出されていて、ハリボテのような印象を受ける。 水道の開発や石炭の再発掘など、鉄平たちは明日への希望に満ちているのに、令和では、いづみが築き上げた会社を手放そうとしたりと、どこか人生を畳もうとしているようにも見えた。 だが、本作において令和の象徴である玲央の人生が、ようやく進みはじめた。鉄平たちが島全体で喜んだ、黒いダイヤモンド(石炭)のような胸の高ぶりはまだ感じられない。 けれど、無気力に生きていた鉄平が「思いきり笑いたい」「石炭が出てほしいって(鉄平のように)心の底から願ってみたい」「俺もダイヤモンドがほしい」と自分の欲望を言葉にできたことには、大きな希望を感じた。 大学生の時、冷ややかな視線を向けられた鉄平が「人生を変えたい」と思ったように、玲央の人生もようやくここから始まるのではないだろうか。 令和を生きる私たちにとっての“ダイヤモンド”は、一体何になるのだろう。わずかな火が灯った胸に手をあてて、鉄平と玲央の物語の結末を見届けたい。 【著者プロフィール:明日菜子】 視聴ドラマは毎クール25本以上のドラマウォッチャー。文春オンライン、Real Sound、マイナビウーマンなどに寄稿。映画ナタリーの座談会企画にも参加。
明日菜子