51戦無敗で最強バイエルンの12連覇を阻止、日本代表選手も脱帽「レバークーゼン」なぜ強い? 「シャビ・アロンソから物語は始まった」
ミュラー(バイエルン)からの評価
誰もがレバークーゼンの強さを認めざるをえなかったのは、ホームでバイエルンを3-0で打ち砕いた試合だろう。結果以上に内容で圧倒。ドイツ代表FWのトーマス・ミュラー(バイエルン)が試合後のテレビインタビューで思いのたけを爆発させていたのが印象的だ。 「サッカーの試合でAからB、BからC、そしてCからDみたいな決まりきったやり方ばかりでプレーしたら、うまくいくはずがない。レバークーゼンはボールを持った時に勇敢で、時にずる賢く仕掛けようとしていた」
キーマンをスカウトした男の証言
そんなレバークーゼンで異色の存在となっているのがドイツ代表MFフロリアン・ビルツだ。ロルフェスSDは「本当に特別な選手。プレーへの喜びがあるし、どんな試合やゲームでも勝ちたいという意欲がある」と称賛し、チームメイトのグラニト・ジャカ(スイス代表)も「ボールを持ったら危険なプレーができて、ボールを持たなくても危険な存在だ。運動量が豊富で、オフザボールでもクレバーな動きを見せる。間違いなくトップ中のトップに入る選手」と賛辞を惜しまない。 アロンソはビルツに全幅の信頼を寄せ、ビルツもそんなアロンソの声に耳を傾け、戦術的にも成熟度を高めている。天才と称される選手にありがちな、自分のプレーばかりだけではない。チームプレーにも本気で取り組む。いつでも謙虚で、地に足がついている。そういえばビルツをケルンU8へとスカウトした当時の育成部長クラウス・パプストがこんな話をしてくれたことがある。 「両親が素晴らしいんだ。人としての成長を何より大事にしている。人間性は言うことがない。あと父親が実はレスリングの選手で、フローは小学生のころにレスリングもやっていたんだ。彼がU13のころ一度戦ってみたことがあったんだけど、完敗だった。体幹レベルがほんとうにすごい」
今季唯一の敗北
周囲から絶賛されているレバークーゼンとビルツだが、《まだ》すべてが最高レベルなわけではない。バイエルンやリバプールからもオファーがあったとされるアロンソ監督が「私のレバークーゼンでの仕事はまだ終わっていない」とクラブ残留を表明したが、それはチームに対してもそうだし、アロンソ自身にとってもそうだろう。 ヨーロッパリーグ決勝ではセリエAのアタランタを前に0-3で完敗。老将ジャン・ピエロ・ガスペリーニ監督の巧みな仕掛けに打開策を見出すことができなかった。試合後には「決勝で敗れたことを忘れることはないだろう。だが我々はベストのレベルになかった。私もだ」と反省の弁を口にした。 どんな監督でも躓きはある。ペップ・グアルディオラも、ユルゲン・クロップも、カルロ・アンチェロッティも、世界に名だたる名将はみな、その監督キャリアの中でいまも心に痛手を負うほどの采配ミスをしている。これがベストと思って打った手が必ずしもハマるわけではない。
トゥヘルの監督論
以前バイエルン監督のトーマス・トゥヘルが印象深いことを話していた。 「監督には『そうではない戦術や戦略で試合に臨んだらどうなっていたのか』を証明する機会がない。次の試合ではすでにあらゆる条件が変わっているんだ。違うやり方でよくなっていたかもしれないし、もっとうまくいかないかもしれない。あらゆることを考慮し、最適解と思えるやり方を決断し、それを実践する。決断することが我々の仕事だ」 様々な決断に責任を取り、その経験の積み重ねで決断の精度を高めていく。来季、アロンソのもとレバークーゼンがどんなサッカーで魅せてくれるのか、楽しみでしょうがない。ブンデスリーガはバイエルンだけではない。
(「欧州サッカーPRESS」中野吉之伴 = 文)
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