一番人気の「かつ重」は300円未満! スーパー・トライアルが物価高時代に「安さ」で勝負できるワケ
アパレルの売り上げ構成比が低いのも特徴か
八千代店に話を戻すと、2階は食品以外を陳列している。かつてのダイエーやイトーヨーカドーのように、非食品も扱うスーパーは1階に食品を置き、2階以上に衣料品を並べるのが一般的だ。一方、八千代店ではアパレルを主としておらず、キャンプ用品やキャリーバッグ、玩具や家電と幅広いジャンルの商品を取り扱う。 そもそもトライアル全体の売り上げにおいて、アパレルは3%に過ぎない。メインは7割超を占める食品で、非食品の中でもアパレルの構成比はかなり小さいのである。ダイエーやイトーヨーカドーなどのGMSは「ユニクロ」「しまむら」「AOKI」などの専門店ブランドの台頭により、売上構成比の大きい衣料品が売れなくなって衰退したという経緯を持つ。そのため、こうした売上構成はトライアルの強みといえるかもしれない。 食品同様、非食品も全体として安い印象を受けた。キャリーバッグは5000~1万円程度であり、家電は中華ブランドやアイリスオーヤマ製品を取り扱っている。PBのアパレル商品は、概ね「ワークマン」と同じ価格帯であり、パーカーは1990円だった。 通常のGMSは商品棚が平行に並び整理されているが、八千代店の2階部分はドン・キホーテのように、どこに何があるか、やや分かりにくい構成となっていた。「楽しさ」をアピールすべく、あえて専門店風の陳列にしているという。GMS衰退の要因は、衣料品が売れなくなったことの他、専門店が並ぶイオンのようなショッピングモールに「レジャー性」で負けたこともあるとされる。消費者が飽きないため、レジャー性を演出することは重要だ。
「1兆円」へ向け、どのような成長を見せるか
トライアルHDは3月に東証グロース市場に上場。2024年6月期は連結売上高が7000億円を突破した。2025年6月期は約30店舗の出店を見込んでおり、今後も勢力拡大を目指す。 衣食住が何でもそろうGMS業態は衰退したが、トライアルのアパレル比率は小さく、売場に一定のレジャー性をもたらすなど、旧業態との違いは大きい。何より食品の圧倒的な安さで消費者の支持を得ている。一方で都市部に弱く、今後も郊外で勢力を伸ばしていきそうだ。地方衰退が進む現状においても、コストコやドン・キホーテのように地方で勢力を伸ばす小売業者は存在する。1兆円の大台に向け、どのような成長軌道を描くか注目が集まる。
著者プロフィール:山口伸
経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。
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