1席6500円のプレミアム映画館 パワーファミリーがつくる物価の新基準
「109シネマズ」が初めて高級路線を打ち出したのは15年。高級住宅街として知られる二子玉川の店舗「109シネマズ二子玉川」(東京・世田谷)で、1席3000円の「エグゼクティブシート」を全シアターに導入した。また、14席限定で1席6800円(15年当時の料金は6000円)の「グランドエグゼクティブシート」をつくった。 すると、いつもよりリッチな気分で映画を楽しめる空間が、二子玉川の富裕層の心をつかんだ。当初の予想以上に高級シートのチケット売り上げが好調で、新宿でも勝負に出た。 ●主要映画館の5割が値上げ 帝国データバンクが実施した映画チケットの価格動向に関する調査によると、主要映画館50社の半数が23年に値上げに踏み切っている。 22年までは1800~1900円がチケット料金の平均的な相場だったが、2000円時代に突入した。月額で見放題のサブスクリプションサービスがネットを通じて浸透しているため、設備や演出でプレミア感を出すなどの「映画館でしか体験できない付加価値をどう提供できるのか」の重要性が増していることが背景にある。 値上げの波が「モノ」から「サービス」へと広がる中で、ラグジュアリーな鑑賞体験の提供を通してサービス価格を引き上げる環境は整いつつある。映画館以外のサービス業界でも、大胆な価格戦略に打って出る企業が続きそうだ。
藤本 莉早