広島カープ古葉監督が壁に記した「耐えて勝つ」 赤ヘル軍団を熱く支えるファンが泣いて、笑って、雄たけび上げた居酒屋「のん呑ん亭」28日閉店
プロ野球広島カープの熱狂的ファンが集う居酒屋「のん呑ん亭」=鹿児島市西田2丁目=が、28日で閉店する。自身もコイ一筋で私設応援団を立ち上げた店主の稗田博見さん(76)、徳子さん(71)夫妻が足かけ38年、二人三脚で続けてきた。親しみやすい人柄で野球ファン以外にも愛された2人は、「多くの人に出会い、さまざまな人生の有り様を教えてもらった。感謝しかない」と話している。 【写真】リーグ優勝を決め、喜びを爆発させるカープファンが集ったのん呑ん亭=2016年9月10日、鹿児島市西田2丁目
同店は1987(昭和62)年5月にオープン。93年には私設応援団「鹿児島鯉(こい)のぼり会(鹿鯉会)」を博見さんら3人で発足させた。翌94年には古葉竹識・元監督(故人)が来店し、壁に書いた「耐えて勝つ」の言葉は今も残る。 店内には、元エースの外木場義郎さん=出水市出身=や阿南準郎・元監督(同)らのサインのほか、ユニホーム、色紙といったグッズがびっしりと並ぶ。元広島投手で日置市に暮らした鵜狩道夫さん(同)から、球場に掲げられていた球団旗も贈られた。「H」マークが染め抜かれたこの旗を、鵜狩さんは古葉元監督から譲り受けたという。 カープ戦のテレビ中継にはファンが集い、開店以降の4度のリーグ優勝を後押した。25年ぶりにリーグ制覇を決めた2016年9月10日には、店の外まで客があふれた。ただ70歳を超えて体力面の問題もあり、今秋に閉店を決断した。 30年以上にわたって料理を担当した徳子さんは「家庭料理しか作ったことがないのに急に開店が決まった。客に喜ばれるか不安だった」と当時を懐かしむ。博見さんは「今は勝ち負けよりも赤いユニホームを見るだけで幸せ。明日の予定がなくなるのは、保育園に入って以来初めて」と持ち前のユーモアを見せる。
21日にカープファンの最後の集いがあるほか、夫妻の“引退”を惜しむ連絡も多い。「閉店後はゆっくりしたい」と語る2人は、「38年楽しかった。この店をやって良かった。皆さんに感謝したい」と話している。
南日本新聞 | 鹿児島