石原さとみ×青木崇高インタビュー 『ミッシング』 絶望のその先にある、手の温もり
手の温もりで伝えあう夫婦の気持ち
ーー物語の主軸となっている沙織里と豊の夫婦関係について、どう感じながら演じていましたか? 石原 女性の感情的な部分とか、男性の冷静さってあると思うんです。沙織里はとても感情的で、一喜一憂してがむしゃらになることが正義だと思っている。同じテンションで怒ってほしいし、泣いてほしいのに冷静でいるように見える豊に対して苛立ちがある。 豊は一喜一憂することが、最善の策じゃないとわかっていて、娘の美羽を見つける目的と結果が大事だと思う人間なので、冷静な判断ができると思うんですよね。そういう人だから、沙織里みたいな感情を出せる人に対して、心を壊さずに対応してくれている。 美羽を失う前は本当にいい夫婦だと思うし、私からすると「本当に沙織里は豊がいて良かったね」って思うんですよね。 ーー男性の目線からどう映りましたか? 青木 夫婦になったきっかけとして、豊が沙織里に対して、直感的に動くところを愛しく思えたっていうのもあると思いますね。ズバズバ言ってくれるところが心地よかったり、愛しかったりするけども、一歩引いて物事を見るというように自然となっていたり、バランスがあるんじゃないですかね。 いい時は、お互いの長所が歯車のように噛み合っていくんですけど、今回のようなことが起きた場合、それが不協和音となって相手のことを信じられないといった苛立ちが生まれてしまう。今まで好きだったところを、逆に捉えてしまうようなことって、普通の夫婦にもあるんじゃないかなと思います。 ーー夫婦のシーンを拝見していて、個人的に、握ったり膝に置いたりとするふたりの手の動きがすごく印象的だなと思いました。 石原 青木 あぁ~。 ーー物語の山場を迎えた後、沙織里と豊の感情が盛り上がって走り出すんですけど、その時も手を繋いでいる。 石原 それ多分、青木さんのアドリブだったと思います。あれは監督からの指示じゃないです。 ーーベッドで弱った沙織里が寝ているシーンも豊が手を差し伸べます。 青木 そこは監督の指示だったかな? 石原 違う違う、あれも青木さんだよ。 青木 俺からか。 石原 覚えてます。あれは青木さんです。豊は、手の温もりで安心感を与えようとするタイプの旦那さんだったんだなぁって思う。 ーーそうなんです。青木さんの手の動きでそれがわかります。 青木 まぁ、豊は言葉があんまりうまくないから(笑) 石原 そう、言葉じゃないと思うんですよ。だから手を添えて"大丈夫だよ"って伝えてる。あと青木さんって、手を握ったときに、人差し指で手の甲をトントンと撫でながら握るんですよ。 青木 本当に? 石原 多分、癖だと思うんですけど。 青木 完全に癖だ。 石原 そうして自分の話すテンポも私が話すテンポも誘導してるんです。 ーーなるほど。指の動きで。 石原 私、"あぁこういうタイプか"と思ったんです。 青木 無意識のうちに‥‥(笑)。でもそうなんだね。 石原 映っているかわからないですけど、一度、豊の手を離して私が豊の手を握り直すっていうシーンがあったんです。私は無意識にそうしたんです、「今、そうやってなだめようとしてるんでしょ?」って感じて、「今はそうじゃない」っていう感覚になったんですよ。だけど、それを跳ね除けて青木さんがまた私の手を握り直すんですよ。 青木 本人はわかってない (笑) 。 石原 あとテレビを見ながら、頭をよしよしってしたシーンがあるんです。本番1回目終わった後に、監督から「それやめよう」って言われたんですけど結局その1回目が使われていたんですよ。やっぱり、豊ってそういう人なんですよね。 ーー物語の最初は、夫婦の関係性がどんなものか、はっきりわからないけれど、手の動きを見ているとすごくしっくりきました。2人が喧嘩をし始めると、青木さんが手を置いたりするので、演出なのか、ずっと気になっていました。 石原 完全に青木さんです。 青木 豊がそうしたというか、理屈で考えたんじゃない部分だと思います。沙織里との距離の中で、彼女が心をちょっとでも鎮めるために、自分が今できることっていうことでやったことなんじゃないかな。 ーー個人的にはそれが一番夫婦の距離感がわかりやすいなと思います。 石原 ありがとうございます、青木さん。 青木 いえいえ。意識してなかったから(笑)。