インフォーマル部門はアフリカ工業化の希望となるか?(下-3)家具製造業編
具体的にウルマでギコンバから木材を購入するのは、クッションや外装カバーを取り付ける前のソファのフレーム(枠組み)を製造する業者である。この業者は、オーナーと職人からなり、職人たちは、オーナーの指示に従い決まったソファの型・大きさに合わせて部材を作るべく、電動ノコギリで購入してきた木材を切断する。 また工事現場で用いられた合板の廃材も用途に応じて切りそろえられる。新品の木材は座る人の重さを支える骨格となる部材に、廃材はそうでない部材として、釘打ちによって組み合わされ、ソファのフレームができあがる(【写真5】はそのフレーム)。日本ならば通常、座る部分(お尻の下)には、スプリングが取り付けられるが、ウルマの製造業者たちは廃材の板を敷くだけである。
こうしてできたフレームは、ソファを完成品へと仕上げる職人たちの手に移される。職人たちは、家具店が並ぶ表通りの裏側の野外の場所に集まり、一定のグループを成している。このグループには特定のオーナー・経営者はいない。互いに縁戚や親しい友人関係でつながっており、その関係を頼り、先輩の職人に付いて数カ月無料のオンザジョブトレーニングを受け、自ら職人となる。私がインタビューしたグループは、皆カンバと呼ばれる民族の出身であった。 職人グループは、複数の販売業者のオーダーに合わせてフレームにさらなる加工を施して、ソファへと完成させていく。フレーム全体への外装カバーとなる布(場合によっては革)の張り付けは、欠かせないの作業の一つである。布は販売店のオーナーとデザイナーが相談して決めた色や柄に従って、別の業者によって作られている。また、ひじ掛けの部分には薄いスポンジを敷いた上から(【写真6】参照)布や革を張り付ける。
布の本体への張り付けには、中国製の小さな釘を使う。連続して口に含んだ小釘を磁石のついた金槌で打ち込んでいく職人たちの早業は、ちょっとした見ものでもある。もう一つの作業として、背もたれの部分を作らなければならない。ここでクッションの素材となるのが、古布、古着などである。たくさんの古布・古着を元は運搬用の袋だったと思われるビニールシートできつく巻き、かたちを整えて背もたれの木組みに固定していく(【写真7】参照)。