台湾ドリームに挑む独立リーグのヒーローたち 小野寺賢人と鈴木駿輔が切り開く道
185㎝ 85kgの恵まれた体躯、150キロを超える速球と多彩な変化球。四球も減り、精神面も充実してきた。2023年は故障で出遅れたが、トレーニングの甲斐もあって、最速153キロだった球速が154キロに上がった。
台湾プロ野球で真価を示す
独立リーグで「マイナスからの挑戦」を続けた鈴木駿輔。だがそこでの5年がなければ今の自分はなかったという。敬遠した球団もあっただろう。 「結果を出してもNPBへは行けない」と言われたこともある。だが、事情は承知の上で調査書を出す球団があったのも事実だ。2年連続投手三冠、シーズンMVP、2023年には最多奪三振。8月の巨人三軍戦では15奪三振、1-0の完封に抑えた。 可能性を信じて毎年成績を残し続けた鈴木だが、NPBの指名はなかった。 2023ドラフト会議の翌日に、CPBL楽天モンキーズからのオファーが届く。かねてから外国への挑戦を視野に入れていた鈴木は、台湾へ行くことを決めた。 「ここで屈してはいられない」 NPBには指名されなかったが、誰にも負けなかったという自負がある。
先に台湾で結果を出した小野寺の存在は、鈴木にとっても刺激になっている。 「台湾の同じリーグでやるというのは、運命だと思いますね」 BCリーグでは地区が違ったため、直接投げ合ったことは数少ない。言葉を交わしたのは、両チームが対決した2023年プレーオフが最初だ。だが、並び称されてきた二人であり、互いに負けたくない思いは強い。 小野寺は言う。「南北のエースと呼ばれるのは嬉しかった。台湾で投げ合えたらいいですね」 鈴木は言う。「小野寺には絶対負けません」
日本独立リーガーの指標へ
バランスがよく完成度の高い投手は、NPBドラフトにはかかりにくい。突出した能力のある投手がドラフト候補になる傾向がある。 だが、パワー系投手の多い台湾プロ野球では、制球が良く三振が取れる投手が「ハマる」可能性は高いと球団も期待している。 楽天モンキーズには2024年から監督に就任する古久保健二、二軍にヘッド兼投手コーチの川岸強、台鋼ホークスには投手統括コーチとして横田久則、補佐に福永春吾と日本人指導者が在籍する。どちらも投手コーチが日本で好投手を探し、鈴木、小野寺に白羽の矢を立てた。NPBドラフトなら指名されにくくなる年齢でも、台湾での外国人選手には関係ない。結果で全てが評価される。
台湾球界は、八百長事件と再編を経て、国民的な盛り上がりの時期を迎えている。選手のレベルは上がってきており、日本球界や日本のファンに向ける意識も高い。NPBを経ていない独立リーガーがトップチームで活躍すれば、日本独立リーグの価値を高めることにもなる。新たに海外を目指す選手の指標ともなるだろう。 (取材/文/特記以外の写真・井上尚子、取材協力・台鋼ホークス、楽天モンキーズ)
井上尚子